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第29話 ホントに居る……!

うわぁ、さすがにこの状況でチェイス室長を呼ぶ勇気はないな。 しばらくはライールが担当してくれるって言ってたし、ライールを呼んでもいいだろうか。 「あら、ミジェ。どうしたの? 修理か何かあったかしら」 「ローラさん! いや今日はちょっと届け物なんだ。ライールいるかな?」 「ええ、もちろん」 「オレ仕事の邪魔したくないから、休憩室にいるよ。悪いけどライール呼んでもらってもいいかな」 「いいけど……」 「あ、それも邪魔かな」 「いえ、大丈夫よ。休憩室で待ってて」 ぱちんとひとつウインクして、ローラさんは奥へと入っていく。ありがたく休憩室で待ってたら、ほどなくライールが走ってきてくれた。 「どーしたの、ミジェ」 「あ、ライール、呼び出してごめんな。この前、皆めちゃくちゃ忙しいって言ってたからさ、なんか役に立つ魔道具作れないかと思ってさ」 「うっわ、ナニコレ! え、まさかこれ全部魔道具?」 紙袋の中から次々出てくる大量の耳栓型の魔道具を見て、ライールは目を丸くしてくれる。チェイス室長もだけど、ライールも魔道具見せた時の反応が良くて嬉しくなるんだよな。 簡単に機能を説明したら、ライールは早速手に取って「つけてみていい?」と聞いてきた。 「うん。耳に装着して、設定したい音量の回数分、指先で軽く耳栓をタップしてみて」 「こんな感じ?」 一回タップしてみて「わっ! 音が消えた!?」と驚いてからタップを増やしてはいちいち驚いてくれる。十一回までタップしたら、自動でゼロに戻るから、多分使い方はそんなに難しくない筈。 「へー消音機能便利だな。耳につけたままで音量調節できるのも便利だわ」 「使ってみて改良するのもできるからさ、困ったことあったら言ってよ」 「おう、皆喜ぶぜ、きっと。えーと、七以上はむしろ集音になるんだよな。面白いなぁ」 軽快にライールの指が耳栓型魔道具をタップした。多分最大音量にしたな、と思ったら、なぜかライールは「あ、やべ」と呟いて、慌てて耳栓を外す。 「どうかした……」 そう言いかけたオレの耳にも、バタバタと慌ただしい足音が聞こえてきた。 バタン! と扉が結構な勢いで開いて、誰かが飛び込んでくる。オレは目をむいた。 「チェイス室長!?」 「ほ、ホントに居る……!」 まるで幽霊でも見たみたいに信じられない様子で、ゆっくりと休憩室に入ってくるチェイス室長と入れ替わりに、ライールは耳栓型魔道具をさっとかき集めて紙袋に入れて小脇に抱えると、ニカッと笑った。 「じゃー俺は仕事に戻る! ありがとな、ミジェ!」 「あ! みんなによろしく!」 「おう! あ、チェイス室長! 防音と結界張っときますんでごゆっくりー!」 え、なんで? と問いたくなるような言葉を残して、ライールは脱兎のごとく駆けていった。

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