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第35話 もう限界だ……!

ヤバい。もう限界だ……! 何がヤバいって体がヤバい。率直に言ってムラムラが止まらない。 それもこれもチェイス室長のせいだ。 初めてチェイス室長の魔力が添い寝に訪れてからずっと……昨日も一昨日もその前も、計四日間ずっと! チェイス室長の魔力は夜になっちゃあ添い寝に来ている。明け方に来る時もあれば、寝た時はいなかったのにいつのまにか纏わりついてる日もあった。とりあえず朝起きたらいつもチェイス室長の魔力に抱きしめられているのだ。 これは困る。 めっちゃ困る。 相変わらずチェイス室長の魔力はぎゅっと抱きしめて来るだけで何にもしない。すこぶる品行方正で、なんならこの状況はそもそもオレが求めていた状況なんじゃないかと思う。 たださ。優しくて気持ちいい魔力だからつい触っちゃうし、チェイス室長に会えない寂しさも相俟って抱きしめちゃうし、そうこうしてるうちに変な気分になってくるわけだ。 朝の爽やかな光の中トイレに駆け込んで、スッキリした後自己嫌悪に陥るこっちの身にもなってほしい。念のため窓を全開にすると朝の喧騒がひときわ胸をえぐる。 祭りも終盤だもんな、そりゃ賑やかにもなる筈だ。 仰々しいパレードや式典なんかがおおむね終わったから、後の二日は出店と大道芸が主になる。前半は王宮主催、後半は庶民が思い思いに祭りを盛り上げるんだ。 今日と明日で祭りも終わり。そうしたらチェイス室長も少しはゆっくりできるんだろうか。魔力が添い寝してくれるのは嬉しいけど、やっぱり本体に会いたいし、話したい。それに、こんな毎日モンモンとさせられると真面目に欲求不満なんだけど。 オレ、自分は淡白な方だと思ってたよ……。 朝も早くから連れ立って楽しそうに市場の方に向かう親子連れや恋人達を窓越しに眺めていたら、道の向こうからなんかすごい勢いでこっちに走ってくる男がいて、オレの目は釘付けになった。 もう市場で大量に買い物したんだろうか、めちゃめちゃ大量な荷物を抱えている。 あれ前見えてんのかなぁ、なんて思ってたら案の定前から来たおっさんにぶつかってよろめいた。ポロッとこぼれた果実が空中にフワッと浮いて、オレは思わず目をパチパチと瞬く。 え、あのシルエット……まさか。 目が釘付けになっているうちに果実はフワフワと浮いてひとりでに紙袋の中に戻っていった。あんなことできるの、あの人しかいないだろ!! 「チェイス室長!!!」 叫んで、オレは次の瞬間には扉をぶち開けて外に飛び出していた。

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