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第38話 オレ、チェイス室長が好きだ
「だからさ、そんなしけたツラしないで飯くらい美味しく食べよ?」
空きっ腹に度数の強い酒を入れたからか、既に腹の中が燃える様に熱い。食料を入れないとすぐさま酔ってしまいそうだ。目の前のテーブルにはオレが「美味しい」「これ好き!」と褒め称えた料理ばっかりが並んでいて、チェイス室長ってちゃんと全部そういうの覚えててくれたんだなぁと感心するくらいだ。
「ホントにオレの好きなヤツばっか買ってきてくれたんだな、ありがと」
「喜んでくれて良かった……!」
笑いかけたら、チェイス室長は心底嬉しそうに笑う。こんなにオレのこと大切にしてくれる人って多分他にいないと思う。
どれから食べようかなぁとテーブルを見渡してたら、見たことないのが混ざってた。
「あれ? これ何?」
「ああ、それは他国の要人達が土産にと持ってきてくれた物の中から、ミジェが好きそうな物を分けて貰ってきたんだよ。祭りの屋台でも出回らない物だから、食べてみたいんじゃないかと思ってね」
「チェイス室長ありがとう!!! めっちゃ嬉しい! なんだろコレ、味の想像がつかない!」
オレが興奮気味に見つめているのは、色とりどりの長方形が複雑に組み上げられて正方形になっている、まるで宝石箱みたいに綺麗な料理。いや、これって料理なのかな。デザートかも? もはや食べてみないとわからない。
「その可愛いオレンジ色の四角いキューブをひとつ食べてご覧」
フォークで突き刺すと、全体がぷるんと揺れて崩れそうで怖い。でも意外にも形は崩れず、目当ての四角だけが簡単に外れた。チェイス室長がニコニコ笑って見てるから、恐る恐る口に入れたらめちゃめちゃ知ってる味で笑ってしまう。
「ニンジンだ」
「そう、実は知ってる食材ばかりだよ。肉とか、このちょっと透明がかってるのはドレッシングをゼリー状に固めたものだと言っていた」
「すげー!!!」
「各々のキューブを選んで食べても無論美味いんだが、いくつかが混ざっても絶妙に味が変わって楽しめるように出来ているらしい。洒落た料理だな」
オレが楽しんで食べ始めたからか、チェイス室長も料理や酒に手が伸びるようになった。食が進めば話も弾む。いつしかチェイス室長もしょげた雰囲気がなくなって、いつもの穏やかで楽しげな雰囲気になっていた。
「やっぱ楽しいな」
「ん?」
「チェイス室長とこうやって会って、話したり笑いあったりするの、やっぱりすごく楽しい」
チェイス室長と食べれば普段は腹に詰め込むだけの飯だってめっちゃ美味い。魔術や魔道具、なんでもない日々の出来事を話しても飽きない。こんなになんでもない時間がこんなに大切になってしまうなんて。
「オレさぁ、チェイス室長が好きだ」
ふと、心の声が転がり出ていた。
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