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第7話 好きがあふれる3 ※
もしかして、もう俺だけ覚えててと言ったときに返事が無かったのも同じ理由だろうか。
もっと意識してよ、いくらでも。
「壱成。俺は――――」
「なにも言うな……っ」
「……壱成?」
「たのむ……もうなにも、言うな。ノブの言葉に、期待も絶望もなにもしたくない。だから、なにも言うな。……もうこの話は終わりだ」
腕で顔を隠し、声を震わせてそんなことを言う。
壱成の言葉の破壊力がやばい。期待するの? 期待しそうで嫌だって、そう言ってる?
壱成が少しでも期待してくれるなら、俺たちもう恋人に……。
そこまで考えて、夢から覚めるようにハッとした。
バカなのか俺は。
だから“京”が恋人になれるわけないだろ。壱成にバレたら終わりなのに、どうやって恋人になれるんだ。
ずっと“ノブ”のままで壱成と恋人になる方法はないだろうか。
俺はグルグルと思考を巡らせた。けれど、どう考えても無理に決まってた。
目の色を見られるわけにはいかない。カラコンすら外せない俺は、壱成を抱きしめたまま朝まで眠ることすらできない。
俺は壱成と恋人にはなれない。
突きつけられる現実に愕然とした。
俺はほぐしていた指を引き抜き、壱成に覆いかぶさった。
口を開くと泣いてしまいそうで、無言で壱成を抱きすくめる。
「ノブ……?」
どうして俺は芸能人なんだ。
どうして壱成はマネージャーなんだ。
そんなものすべて捨てて壱成を手に入れたい。
やっと自分の気持ちに気がついたのに、伝えることもできないなんて。
「どうした、ノブ」
「……壱成」
「……なんだ?」
「壱成が……ほしい」
壱成のすべてがほしい。
全部、全部、俺にちょうだい……壱成。
「俺も……ノブがほしい。こんな気持ちは始めてだ」
「もらってよ、全部」
あげるよ、全部。
顔を上げて壱成を見つめる。俺の知ってる“榊さん”よりも穏やかで柔らかい表情。
仕事から離れたら誰にでも見せる顔なのか、それとも“ノブ”にだけ見せる顔?
独り占めにしたい。他の誰にも見られたくない。
唇に優しくキスをすると初めて壱成のほうから舌を出してくれた。嬉しすぎて胸が高鳴った。
舌を強く吸って甘噛みすると、壱成が嬉しそうに笑った。
俺の首に壱成の腕が回り、さらに深いキスになる。壱成の仕草のなにもかもがクる。首に回った腕は、マジでやばい……。
どれだけキスをしても足りない。夢みたいで胸がいっぱいだ。でもこのままだといつまでもやめられそうになかった。
俺はついばむキスを数回繰り返し唇を離した。
頬が赤く染まりトロンとした瞳で、壱成が俺を見つめる。
毎日キリッと凛々しい壱成のこんな顔、本当にやばい。マジで可愛すぎる。
壱成が漏らす熱い吐息にゾクゾクがとまらない。
「ちょっと待ってて」
頭を撫でてチュッとキスをして、俺は身体を起こし枕元からゴムを手に取った。
すると、俺が準備をしてる間に、壱成はうつ伏せになって腰を上げ顔を枕に押し付けた。
「壱成……後ろが好きなの?」
「……いや、いつもこうだから」
やっぱりそうか、と思わずグッと手をにぎりしめた。
いままでの男が、顔を見ないで声も聞かずに済むようにこの体勢をさせていたんだろう。
本当にどうしてだ。世の中そんな男ばっかりじゃねぇのに、なんでだよ……っ。
壱成はいままで、そんな男にどんな気持ちで抱かれてたんだ……っ。
「壱成。俺は壱成の顔もみたいし、声も聞きたいし、キスもしたい。だから仰向けがいいな」
「…………」
「ダメ?」
「いや……」
小さくつぶやいて、壱成はゆっくりと起き上がり俺と向き合った。
「壱成?」
じっと俺の目を見て静かに口を開く。
「ノブなら……そう言うかもなって、実はちょっとだけ思ってた」
トンと俺の肩に頭を乗せた。
「本当に、おかしなやつだな……ノブ」
「……いままでの男がおかしいんだよ」
「ノブは……本当に優しいな」
顔を上げた壱成が俺の唇をふさいだ。そして首に腕を回しキスをしながら後ろに倒れ込む。
「抱いてくれ……ノブ」
もう好きがあふれて死にそうだ。マジで心臓が痛くて苦しい。
「じゃあ、ゆっくり入れるね」
「……そんな優しくするな……慣れてない」
「じゃあ、慣れるまで俺が死ぬほど優しく抱いてあげるよ、壱成」
「……いい、から。……は……っ、ぁ……っ……」
トロトロにほぐしてたっぷりのローションで準備した壱成の後ろに、俺自身をゆっくりと沈めていく。
壱成の可愛い喘ぎを飲み込むように唇を合わせ舌を絡ませながら、胸の突起を指の腹で優しく撫でた。
「ん……っ、ふ……っ……」
壱成の後ろは、初めてかと思うくらいにキツい。
優しくされるのは慣れてないなんて、もう二度と言えないくらい優しくしたい。
ゆっくり、ゆっくり、少しずつ。まるで吸い付くような壱成の中に意識ごと持っていかれそうになりながら、俺はゆっくり腰を進めた。
壱成の身体はずっとビクビク震えていて、痛いのか感じているのかわからない。
「痛い? 大丈夫?」
「……へ」
「うん?」
「平気……だ」
「よかった。もう少しだけ、頑張って。壱成」
浅いところでゆっくり出し入れしていた俺のものを、またゆっくり奥まで沈めていく。
「はぁ……っ、ぁ……ノブ……」
壱成が潤んだ瞳で俺を見つめ、うなじを少しだけクッと引いた。
もっとキスがほしい、と声が聞こえるようだった。
「可愛い、壱成」
「……そ……んな言葉……俺には似合わない、だろ」
「その返しも、全部可愛い。本当に……参るよ」
「んぅ、……は……」
唇を合わせると首に壱成の腕が巻き付き、しがみつくようにぎゅっとされて、俺の心臓もぎゅっとなった。
もう自然と絡ませてくる壱成の舌が愛おしい。
「あ……っ……、っは……」
「奥まで、入った。大丈夫?」
「……んっ、きもち……いぃ、……はぁ……っ」
「壱成……」
壱成……壱成……好きだよ、壱成。
自覚のないまま押さえ込んでいた壱成への思いがどんどんあふれる。
俺は壱成の頭を撫でながら、頬や額にキスを落とした。
今日、壱成があのバーを選んでくれてよかった。あそこで出会えてよかった。壱成を好きだと気づくことができて本当によかった。
幸せが胸いっぱいに広がった。幸せで心臓が痛い。もう泣きそうだ。
「ノブ……」
「ん?」
「動かない……のか?」
「……もう少し、このままでもいい?」
「俺なら、平気だぞ……?」
「壱成、もしかして物足りない?」
顔を上げて顔を見ながら少しだけからかい半分でそう聞くと、恥じらうようにぐっと言葉に詰まる壱成に愛おしさがあふれた。
本当にギャップやばい……。
「ごめん……実は俺が大丈夫じゃないんだよね。ちょっとだけ待って」
やばい……マジで涙出る。
チュッと唇にキスをして、壱成の頭を包み込むようにギュッとした。
壱成と繋がってると思うと、胸がいっぱいで身体中が沸騰して、もう動かさなくても中にいるだけで爆発しそうだった。
「ノブ……」
壱成が俺の頭をそっと撫でた。
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