23 / 75
第23話 裏切られた 1 ♢壱成♢ ※
ノブはいつものように朝早くに家にやってきた。
ドアを開けた途端に、いつも以上に嬉しそうな笑顔のノブが飛び込んできて、すぐにでも飛びつきたくなった。
でも、俺が飛びつくよりも先にノブに抱きしめられた。
「壱成、会えてよかった……。もう会ってくれねぇかもって……すげぇ怖かった。ありがとう、連絡くれて」
「……どうして。そんなわけないだろ」
必死で俺を抱きしめるノブの背中を優しくさする。
「ちゃんと休めって言っておきながら、すぐ会いに来て……ごめん」
「会いたいから連絡したんだ。来てくれて嬉しいよ」
「好きだよ……壱成。もう俺だけ好きでもいい。でも会うたびに言わせて。好きだって、ずっと言わせて。……だめか?」
本当は、好きだと言われるたびに俺じゃない誰かの存在が頭をかすめる。
でも、ノブは少しずつでも、ちゃんと俺を好きになってくれていると思う。いまはそう信じたい。
「……ああ。いいよ」
「壱成……っ。マジで嬉しい……好きだよ……っ」
「ノブ……」
俺も……好きだよ。
ノブの背中に腕を回し、首元に顔をうずめた。
自分にセフレだと言い聞かせるのが難しくなりそうだ。
でもそれでもいい。俺はノブに愛されたい。
「……ノブ。今日は……どこも行きたくない……」
「え?」
「……抱いてほしいんだ……いますぐ」
「壱成……」
もう二週間以上ノブを感じていない。
もう待てなかった。
俺たちは見つめ合い、激しくキスをした。
キスをしながら服を脱がし、もつれ合いながらベッドに移動する。
ノブは俺をベッドに押し倒すと、荒々しく身体中にキスをした。
「はぁ……っ……っ、あ……っ、ノブ……ぁっ」
ノブも俺と同じ温度で求めてくれていると全身に伝わって、嬉しくて涙がにじんだ。
久しぶりのノブの熱に頭がのぼせる。身体が敏感に反応し、いつも以上に声が漏れた。
「ん……っぁ、ノブ……もう準備してあるから……はやく」
「ダメ。いまからいっぱい壱成を可愛がってグズグズにするから」
「それは……あとでいい……。時間ならたっぷりある……だろ……」
ノブは聞こえないというように俺の弱い乳首に吸い付き、反対側も指先でカリカリといじる。
「はっ、ぁ……っ、ちくび……イイッ、あ゙……っ……」
「ほんと、乳首弱いな。乳首だけでイかせてみてぇんだけど」
「それは、さすがに無理……だろ。あぁ……っ」
ビリビリと快感が全身に走って身体が仰け反った。そして、俺の後ろがさらにノブを欲して、たまらなくうずく。
「んっ、ん……っ、もう……入れてくれ、ノブ……。もう待てない……」
身体を起こしノブのボクサーパンツに指をかけると、もうすでにはち切れそうなノブのものが顔を出した。
ノブも俺をほしがっている。舐めて準備をしなくても、もう充分に硬いそれが嬉しくて口角が上がった。
「ほら……ノブももう入れたいだろ?」
「壱成は……『もう待てない』が多いよな?」
「……引く、か?」
「なに言ってんのかな、もー……」
そう言って俺をまたベッドに寝かせた。
「引いてたらこんななってねぇっつの」
ノブが俺のものに優しくふれて、チュッチュッと数回キスをした。
「んっンっ……」
前戯でそれを舐めずに終わるとき、まるで儀式のようにいつもノブはそうする。俺のものに向かって「今日は舐めてやれなくてごめんな」と言いながらキスをするときもあり、それが可愛くて俺は大好きだった。
「ノブ、そのまま入れて……」
「もー……そのおねだり、ほんとやばい。今日も中にほしいの?」
「……ああ、ほしいよ……」
中も外も全部ノブに愛されたい。満たされたい。
「いいよ。俺の全部、壱成にやるよ」
ほしいよ。本当にノブの全部がほしい。全部、俺のものにできればいいのに……。
「あっ、あ゙ぁ…………っ、ノ……ブ……っ」
久しぶりに受け入れたノブのものは、すごく熱くて大きくて、俺の中がノブでいっぱいになった。
「ぅ……っ、壱……成……っ」
ずっとほしかった。やっとノブと繋がれた。身体中が幸福感で満たされていく。
「壱成……っ」
「ノブ……ん……っ」
ノブが俺の唇をキスでふさぐ。深くとろけるキスをしながら、ノブは腰を優しく揺するように中をこすった。
「んん……っ、ンっ……っ……」
嬉しい。俺はノブに抱かれて本当に幸せだ。
好きだ、ノブ。ずっとこのまま繋がっていたい。
ノブを見つめながらキスをして、いつものようにホクロが目に入った。
そうだホクロ。忘れてた。ほら、やっぱりノブのほうが色が薄…………。
ドクンと心臓が鳴った。
ノブのホクロを何度も見た。
でも、色も形も位置も、京と……。
同……じ…………?
ドクドクと心臓の音が耳に響く。
そんな……まさか……ありえない。
昨日見つけた京の額のホクロ、あれは無いだろ……。
頬のホクロは……。
次々と確認し、愕然とする。
ノブと京は、どのホクロの位置も完全に一致していた。
サッと血の気が引いて身体が凍りつく。
どういうことだ……。
そんな偶然ありえるのか? バカな。そんなことあるわけない。
それなら……ノブは……京、なのか……?
だって、髪も目も黒いじゃないか……。
そうだよ、京のわけがない。
そう思い、メガネ越しにノブの目を凝視した。
そして、さらに愕然とする。これはコンタクトだ……コンタクトを付けてメガネなんておかしい。これは……カラコンか……。
「どうしたの? 壱成?」
唇を離して不思議そうに俺を見つめ、また優しく口付けるノブに背筋が凍った。
京……だ……。この声、京だ……。
いつもの京の声とは違う。ノブだけの甘い響き。
京が俺に甘くささやくことは無い。だから俺は……違うと思い込んだ。
なぜ気が付かなかったんだ。どうして……っ。
なぜ京は俺を騙してこんなことを……っ。
裏切られた思いで、まるで心が引き裂かれたように痛みが走った。
ともだちにシェアしよう!