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第26話 セフレとは……

 最近、どうも壱成がおかしい。  甘えてくれるのはすごい嬉しいが、どう考えてもこれはセフレの距離じゃない。  嬉しいんだけど。すげえ嬉しいんだけども。  あれから壱成は、全部の休みを教えるどころか、仕事の日も「会いたい」と連絡をくれるようになった。  壱成は休まなきゃダメだろ……と思いながらも、そんなの飛んで会いに行くに決まってる。  壱成は“ノブ”に会えないと元気が出ないと言っていた。だから俺は会いに行くっ!  その連絡が、俺が休みの日や前日が多いのもタイミングがよくて最高だった。  元々俺たちは基本休みは同じだ。でも壱成はその休みを所々返上という形で仕事になるから、本来なら休みだったはずの日に会いたがる。まあ不思議じゃない。 「あ一……えっと、なんか他のもん観ねぇ?」 「嫌だ。俺はこれが観たいんだ。絶対譲らないぞ」  壱成の「会いたい」コールで飛んできたら、PROUDが出る歌番組がリビングのテレビに流れていた。俺はいつも録画で観るから忘れていた。そういえば今日だった。  マジか……もうすぐ俺らじゃん。“ノブ”と見比べられたらやべえやつじゃんっ。 「ノブは夕飯は食べたのか?」 「あ、いやまだ」  サブマネの運転で帰宅してすぐの会いたいコールだったか ら、まだなにも食べていなかった。   「それならよかった。じゃあ一緒に食べよう」 「えっ俺のも作ってくれたの?」 「ロコモコ丼だ」 「えっ、めっちゃ大好きっ!」 「前に作ったハンバーグの残りを冷凍してあったんだ」 「え、あのハンバーグ! あれも超美味かった! やったっ! すげぇ美味そう! 食っていい?」 「食っていいぞ」  俺の口調を真似てクスクス笑う壱成と一緒に食べ始めたところで、テレビからPROUDの曲が流れ始めた。  うわ……きたよ……っ。 「ノブ、これが京だよ」 「あー……うん、なんとなく知ってる」 「なんとなく、ね」  壱成はそうつぶやき、楽しそうに笑ってPROUDを眺めてる。 「カッコイイよなPROUD」  頼むから返事に困ること言わないでくれ。 「まあ、そうかもね」 「素っ気ないな。カッコイイだろ?  もう最高だよ」 「ん、そっか」  俺はなるベく顔を見比ベられないように下を向いてロコモコ丼を食ベた。ってか超うめぇっ。 「俺な。ずっとPROUDみんなのファンで、誰のファンとかはなかったんだけどな? 最近、京が一番好きなんだ」 「ぐふ……っっ」  ご飯を喉に詰まらせて慌てて水をがぶ飲みした。 「え、おい、大丈夫か?」 「だ……だい、じょぶ」  やべぇ、こんな反応おかしいだろっ。  俺はノブ。俺はノブ。何度も言い聞かせる。  立ち上がってこちらに来て、俺の背中をさする壱成の表情がよくわからない。  なんでそんな幸せそうな顔してんの? 俺は壱成のせいで苦しいんだけどっ!  突然なんの告白なんだ……っ。だって壱成はみんな平等に好きなんじゃねぇの?   いいのかよ、俺が一番とか言っちゃってっ。  ……やべぇ、めっちゃ嬉しい。  嬉しいけど、でも嬉しい反応はできなくて、ゆるみそうになる正直な口元を慌ててぎゅっと結ぶ。 「で、なんで京が一番好きだと思う?」 「……なんで……だろ。わかんねぇ……」 「はぁ。ノブは鈍感なんだな」 「なんで純感……」 「そんなの、京がノブに似てるからに決まってるだろ?」   また不意打ちでそんなことを言うから、みるみる顔が熱くなった。  でたよっ、殺し文句っ。最近こんなんばっかだよっ。ほんと壱成は俺をどうしたいんだっ。  あれ、この反応は変じゃねぇよな?  隠さなくていいんだよな?   ノブなのか京なのか、隠すのか隠さないのか、頭が混乱する。 「ノブ」  呼ばれて顔を上げると、突然唇にキスが降ってきた。 「ご飯粒がついてた。ん、取れたぞ」  もう心臓が壊れそうだ。誰か助けてくれ。  絶対最近の壱成はおかしい。  いままではこんなに甘くなかった。俺が甘やかすほうだったはずなのに、最近やたらと壱成が男前だ。かと思えば可愛く甘えてくるし、本当に俺の心臓が持ちそうにない……。  食事も終わり、テレビも次のアーティストに変わった。 「ノブ、PROUD終わっちゃったな」 「そ、だな……」  うん。なんて言えばいいのかわかんねぇ……。 「ノブ、明日は仕事だよな?」 「壱成もな?」  俺は本当は休みだが、絶対に言えない。  京との共通点を教えるわけにはいかない。 「まだ…….いてくれるか?」 「まだ九時じゃん。まだまだいるよ。あ、壱成がよければだけど」 「いいに決まってるだろ。もっといてくれ」  ホクホクと嬉しそうに笑う壱成に、また心臓がやられた。は一やばい……めっちゃ可愛い。  俺がもだえている間に、壱成は二人分の食器をささっと片し シンクに置くと、俺の手を引いて立ち上がらせる。 「ん?」  どうした?  と続ける前に壱成が俺を抱きしめた。 「壱成……っ」 「ノブ、ベッドに行こう」 「シャワー……」 「もう入った」 「壱成……」 「ノブ……」  俺たちは、どちらからともなく唇を合わせ、深く舌をからませた。  

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