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第57話 愛し合う  1 *

 壱成は俺のシャツを脱がせてから、またしっかりとアームホルダーを付け直す。 「今はいいのに」 「今こそだめだろ」  妙に冷静な壱成がおかしくて吹き出した。  笑う俺を気にもせず、壱成は心配そうな顔をする。 「このままだと背中痛くないか……? 横になったほうが……いや横のほうが痛いか……?」 「大丈夫だって。痛くねぇから、このままでやろ? 横になったら壱成が遠い……」  騎乗位は横になるとキスもできない。いまは自由に動けないから壱成が遠いのは嫌だ。  壱成は俺の言葉を聞いて、ふわっと笑った。   「俺もいま、同じように思ってた」  壱成の笑顔は本当にやばい。  こんなの、男も女も一瞬で骨抜きにされるだろ。 「壱成……その顔、誰にも見せんなよな」 「その顔?」 「その……悩殺級の笑顔だよ」 「悩殺……」  小さくつぶやいてポカンとしてから吹き出した。 「そんなのお前くらいだろ」    ほんとわかってねぇな。  女にモテるってのがどういうことなのか、なんでわかんねぇのかな。  壱成は初見でネコに見られないせいで自己評価が低すぎる。  最近、壱成の表情がどんどん柔らかくなって俺は気が気じゃないってのに。   「お前は悩殺されてくれるんだな?」 「されるよ……当たり前じゃん。誰にも見せたくねぇよ……」  壱成は嬉しそうに目を細めて笑い、俺の唇に優しくキスをした。  うなじを撫でるとふるっと身体を震わせる。 「京……」  唇を少しづつずらし耳を舐められた。俺がかすかに声を漏らすと、壱成が嬉しそうに笑ったのを耳元に感じた。そんな壱成が可愛くて愛おしい。  耳をじっくりと舐められたあと、唇がゆっくりと下りていく。 「壱成…………ん……っ」  壱成は、俺の身体中を優しく撫でてキスをする。  こんなにしっかりと壱成に身体中を愛撫されるのは初めてだった。  俺はいつも主導権は渡さない。壱成もそれをわかってて、いつも身を任せてくれていた。 「ん、……気持ち……い…………」     あたえられる愛撫に素直に感じることにした。  胸の突起を舐めながら、嬉しそうに見上げる壱成に身体中がしびれた。   「壱成も脱いで……」    俺が片手でボタンを外そうとすると、壱成が自分で素早く脱いでいく。  俺のジーンズも脱がし二人ともすべて脱ぎ終わると、壱成がゆっくりと頬を染めた。  愛撫で紅潮するのとは違う。脱ぎ合うだけで赤くなるなんて初めて見た。   「壱成、照れてる?」  壱成は、俺の髪を梳くように撫で、目をじっと見つめて静かに言葉を落とす。 「……京なんだな……と思って……」 「ん?」 「……ノブには慣れてるが……京は初めて、だろ」    あ、そういうこと?  マジで可愛い、壱成。 「ノブには照れないのに、京には照れんの?」 「ノブにだって初めは照れてただろ?」 「いいや? 初めてのときの壱成は淡々としてて照れるとかまったくなかったじゃん。すぐにキスだけでトロンとしちゃって、あれは照れじゃねぇな。二回目はすげぇ大胆にいきなりフェラしてきたし、三回目は――――」 「も、もういいっ。わかったっ」  真っ赤な顔で俺の口を手でふさぐ壱成が可愛すぎる。 「お、お前だけ俺だとわかってたなんて……ずるいだろ」  拗ねるように愚痴る壱成も可愛い。もう全部可愛い。  俺がうなじを引き寄せると、壱成はキスができるように口をふさいでいる手を静かに外す。ほんと可愛い。ぐっとさらに引き寄せて唇をふさいだ。   「……ン、……きょう……」  首に腕が回り、壱成の口角が嬉しそうに上がる。  俺は唇をついばみながら問いかけた。 「壱成は、いつから俺だって気づいてた?」    壱成はびっくりした顔で目を瞬く。   「な……に言ってる。あの日お前が京で来るまで知らなかった」 「は? いやいや、それは嘘でしょ」  壱成は「京に愛してるとずっと言いたかった」「ずっと京に抱かれてみたかった」と言っていた。  ずっと、ってことは知ってたってことじゃん。  なんでいまさら隠すんだ? 「……嘘じゃない」 「なんで隠すの? あ、知ってて黙ってたの恥ずかしい?」 「だから……嘘じゃないっ」 「んぅ……」    誤魔化すようにキスで唇をふさがれた。  もう嘘だって言ってるようなもんじゃん。  そっか、恥ずかしいんだ。本当に可愛い。マジでやばい。   笑いながら壱成の唇を味わった。    

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