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第13話 決心

「慎のバカ野郎」    森下がキスをねだると、それには優しく応えてくれる。 「お前がしてくれる分には、何をしてもいいぞ。突っ込む以外は」    佐久間が笑いながら、まな板の鯉のように大の字になる。  このままじゃ終われない。  前にも進めない。  森下は、曖昧な関係には決着をつけよう、と心を決める。  上半身を起こし、佐久間の顔を上から見下ろすと、まっすぐに目が合う。 「慎……俺、慎が好きだよ」 「青葉……」    佐久間は真顔になって、森下の次の言葉を待っている。 「俺のこと好きなら、ちゃんと責任とれよ」 「責任?」 「俺はもう慎以外の男を好きになったりしない。だから……お前も俺を捨てないって約束しろ!」    佐久間は少し驚いた顔をしたが、安心したようにクスっと笑って森下を抱きしめた。 「捨てるわけないだろ……やっとつかまえたっていうのに」 「つかまえた? 俺を?」 「二年もかかったぞ。お前こそ責任とれ」    佐久間は抱きしめたまま、森下の頭を小突く。 「知ってたんだろうが。俺がずっとお前のこと見てたことぐらい」 「そりゃあ知ってたけど」    ライバルだと思っていたのだ。  まさか恋だなんて、思うはずがない。  言いたいことがいろいろ頭に浮かんだけれど、森下は佐久間の嬉しそうな笑顔を見たら何も言えなくなってしまった。    信じよう、と思う。  もしこの先別れが来ることがあっても、後悔しないだろうと思う。  それより、今のこの一瞬を大事にしたい。  森下は腕を回して、佐久間にぎゅっと抱きつき、深呼吸をする。 「慎……」 「なんだ」 「抱かれてやるよ」    佐久間は今度は本当に驚いた顔をして、森下の顔をのぞきこむ。 「本気で言ってるのか?」 「さっさとしないと、気が変わるぞ」 「怖いんじゃなかったのか」    頭をなでて抱きしめながら、煮え切らない佐久間に、森下は腹が立ってくる。  俺がここまで言ってやってんのに! 「できるんだろ! お前だったら、怖がらせずに痛くもないようにできる自信あるだろっ!!」    佐久間はちょっと困ったような顔になり、それから身体を反転させて、、森下を押し倒した。 「お前の身体だからな。痛いかどうかはお前にしかわからん」    森下は、ちょっとだけ腰が引けてしまいそうになったが、男に二言はない、とにらみ返す。 「傷つけないように、最大限の努力はする」 「政治家みたいなこと言ってんじゃねえよ」    森下は佐久間の頭を引き寄せて、熱烈にキスをして煽る。 「ちょっと待て」    佐久間は森下を制して起きあがると、棚の引き出しからコンドームの箱とローションを持ってくる。 「まさかこういう展開になるとは、思ってなかったからな」    すこし緊張したような、照れたような表情。  唇が重なる。  佐久間の唇が、少しずつ、首筋から鎖骨を伝って乳首へたどり着く。  まだその感覚に慣れなくて、森下は顔が熱くなる。 「乳首フェチ」 「感じないやつの乳首には興味ないけどな」    佐久間はクスっと笑って言い返す。  佐久間に乳首を吸われながら、森下の身体はぴくぴく反応している。 「あっ、んっ、んんっ」 「声出していいぞ。角部屋だから隣に聞こえることはない」 「あっ、や、ああんっ」    両方の乳首を弄ばれて、森下は声を上げる。  佐久間は嬉しそうに、しつこく優しくそれを唇と指先で弄んで、森下の下半身に手をのばす。  待ちわびたように、そこは濡れて露を滴らせている。  乳首を吸われながら、下半身に触れられると、森下はさらに甘い喘ぎ声を上げた。 「慎っ、気持ち、いい……」 「今のうちに気持ちよくなっとけ」    脅すなよ、と森下は身体を硬直させる。  佐久間がローションを手にする。  森下も、されることは頭では分かっている。  いつも自分がしていることだ。  ゆっくりと、指が一本挿入されると、身体が震える。  佐久間は森下の唇にキスをしてやりながら、優しく中を探り、弱点を見つけ出す。 「ここだな?」    くっと息をつめて、森下が軽くのけぞる。  じん、と快感の芽が生まれ、広がっていく。  一度覚えた快感を追いかけるのは簡単だ。  佐久間は森下の様子を見ながら、二本目の指も挿れてみる。  森下は少し顔をゆがませたが、また快感を追いかけ始める。 「こうすると怖いか?」    二本の指をそろえて、ゆっくり出し入れすると、森下がしがみついてきた。  小さく震えている森下に、佐久間は頭の中で葛藤する。  無理をさせるのは、可哀想だと思う。 「だい、じょうぶ……」 「強がるな。怖かったら、怖いって言え」    佐久間は身体を起こして、森下のモノを口に含むと、思い切り舌で刺激してやる。 「あ、ああっ、慎っ……」    森下は佐久間の頭を股間に抱きしめて、腰を震わせた。  指で急所を擦りながら、舌も森下の好きなところを攻めてやる。 「あ、やっ、ああん、イク、イクってば」    泣き声のような喘ぎを無視して、佐久間は三本目の指をずぶっと突っ込んだ。  ひっ、と小さく悲鳴を上げて、森下はのけぞる。  佐久間は容赦なくぐりぐり指をねじ込んで後ろを解した。  後のことを思えば、ここが肝心だ。  できるだけ、モノを強くしゃぶって気をまぎらせてやりながら、少しずつ後ろを広げていく。    三本の指を出し入れしても、森下はもう悲鳴を上げなかった。  上げているのは、ただ甘い喘ぎだけだ。  口の中で森下のモノが、硬度を増してびくびくし始める。  佐久間は片手でコンドームを装着しながら、森下の顔をのぞきこんだ。 「まだやめれるぞ」    不安げな顔をしている森下に、微笑みかける。  森下は佐久間の首に手を回して、ぎゅっと抱きついた。 「痛かったら、けっ飛ばしてやる」    足を大きく開かせて、佐久間は森下の膝裏を抱え上げた。 「力抜いてろよ」 「いっ……」    ずぶっ、と押し入ってくる衝撃に、森下は唇を噛んだ。  大丈夫、我慢できる、と自分に言い聞かせて。  痛いのは最初だけだ、と言っていた佐野の顔が脳裏に浮かぶ。 「こら、唇噛むな。切れるぞ」    佐久間は、森下にキスをして、舌を絡めてやる。  夢中で舌を絡めながら、森下は佐久間の熱くて固いモノが、ぐぐっと押し込まれていく感触に背筋を震わせた。  さっきまで攻められていた気持ちいい場所が、固いモノに擦られて、ぞくぞくする。  ぎりぎりまで後孔いっぱいに押し込まれていく感覚に、身体が震えて、涙が勝手にこぼれてしまう。  奥まで慎重に押し込むと、佐久間は森下の髪をなで、涙をぬぐった。

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