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第4話 単純で真っ直ぐな感情

 離れた手の感触の後、入れ替りで鞍崎がベッドの横にしゃがんだ。  マコトは、脱いだスーツのジャケットを椅子の背に引っ掛け、レジ袋の中身を片付け始める。 「こんなときくらい素直に頼れよ……」  ぺりぺりと冷却シートのフィルムを剥がしながら、呆れた声を紡ぐ鞍崎。 「……早く、帰れ」  冷却シートを受け取ろうと伸ばした手は捕まれ、前髪を上げるように誘導される。 「はいはい。買ってきたもんしまったら帰るよ」  ぺたりと額に触れた冷たさに、気持ちが和む。  鞍崎は、すぐに腰を上げ、キッチンへと足を向けた。  鞍崎を追う俺の視界には、こちらを背に立っているマコトの姿も映る。  マコトと鞍崎が並び立つキッチンに、胸の奥が、ぞわぞわとした気持ち悪さを抱えた。  苛つく感情に頭の痛みも忘れ、俺は身体を起こし、ベッドから這い出ていた。  鞍崎には、網野という恋人がいる。  マコトは、俺が好き。  取られる……、なんてコトは、あり得ない。  わかってるのに、気に食わない。  熱で機能を失った理性は、単純で真っ直ぐな感情の赴くままに、身体を動かした。  ぺたぺたと2人に歩み寄り、こちらに背を向けたままのマコトに、ぎゅっと後ろから抱き着いた。 「こいつ……、俺の」  むすりとした顔で、鞍崎を威嚇する。  きょとんとした表情を曝した鞍崎は、1拍の空白を挟み、弾かれたように笑い出す。  笑われたコトに、俺の心が更に拗ねた。 「お前でも、そんな顔すんのな」  ははっと軽く声を漏らす鞍崎と、頭の上から感じるマコトの視線。  真後ろから抱き着いている俺の表情は、マコトには見えておらず、確認しようと足掻く雰囲気だけが伝わってくる。  〝そんな顔〞と称されたコトが、急激に恥ずかしくなる。  嫉妬心を剥き出しに睨みつけた不細工な俺の顔。  鞍崎に向けていた視線を外し、抱き着いたままのマコトの背に、それを埋め隠す。 「鞍崎さん、すいません。オレ、傍に居るんで……」  遠回しに鞍崎に帰るよう促したマコトの手が、背後へと回り、俺の脇腹をぽんぽんっと叩く。 「いや。じゃ、あとは頼むな」  微かな可笑しさを含みながら言葉を紡いだ鞍崎は、そそくさと部屋を出ていった。

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