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第20話 ちょっとした嫉妬心

 ベッドに座り、スポーツドリンクをごきゅごきゅと飲む。 「小佐田さん、伝染して悪かったって謝ってましたよ」  買ってきたものを片付けた網野は、ベッドの端に腰掛け、申し訳なさげに言葉を紡いだ。 「来るなって言われたのに押しかけたのこっちだし。そんな酷くもねぇし、気にするコトないんだけどな」  少し熱は出たが、喉の痛みもそこまで酷くはない。  蓋を閉めたペットボトルを阿吽の呼吸で受け取った網野は、それを傍らに置き、俺の手を握る。 「於久ももらったらしくて、丸一日寝込んだって言ってたんで……」  片手を握り、柔らかく俺の髪を梳きつつ、思ったよりも軽症で良かったと、安堵の息を吐く。 「あー。マコトくんに任せて帰ってきたから……」  少ししか話していない俺ですら、もらったのだ。  あれだけ小佐田に甘えられれば、確実に罹患するだろう。  あんな可愛いコトされたら、マコトくんも無下には、出来ないよな……。  また思い出し笑いをしてしまう俺に、網野の顔が若干の歪みを浮かべた。  この顔は、マコトくんへのちょっとした嫉妬だ。  〝於久くん〞と呼ぼうとしたのだが、呼びにくく〝マコトくん〞と称するコトに落ち着いた。  網野的には、自分は名字呼びなのに、マコトくんが名前で呼ばれるのが、面白くないらしい。  網野を名前で呼ぶコトも、出来ないわけではない。  ただ、自分に自信がないだけだ。  咄嗟の判断で、名前の呼びわけを出来るほど、俺は器用じゃない。  網野にもきちんと説明し、渋々ではあったが、納得させた。  説明した時は、そんな細かいコトを気にするような小さな男じゃないと、言い放ってはいたが、時折、こうして本心を覗かせる。  面白くなさげな雰囲気を隠しもせずに、網野は俺の指先を弄ぶ。 「辛いときくらい頼ってください。チャラくて軽くて頼りないかもだけど、弱ってるときくらい、面倒見させてくださいよ」  しょぼんとした顔で、俺を見やる網野。  小佐田に辛い時くらい頼れなんて偉そうなコトを言ったが、これでは、そっくりそのまま返されてしまうよな……。

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