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「ぇ……」 突然響いた声。 見ると、目の前に大きな光の玉が浮いていた。 『こんなに美味そうな魔力持ってるのに宝の持ち腐れか? 契約しに来たのだろう?』 これは、何? 今までの精霊とは比べ物にならないほど大きくて、思わず後ずさる。 『あら、ここに降りてくるなんて珍しいじゃない。 あなたも釣られて来たの?』 『周りが何やらうるさかったからな。 だが驚いた、これは上玉だ』 『やめた方がいいわよ。この子なんだか変だもの』 『ほう…変ねぇ……』 目もない、口もない、そんな玉からじぃ…と見られる感覚に、緊張してピシリと動けなくなる。 どうしよう。何かを話した方がいいんだろうけど、何も出てこなくて視線を左右に動かすしかない。 一体何? なんの精霊? 俺、どうすればいいの……? 『いいだろう、我が契約してやろう』 「…………ぇ?」 今、なんて? 『本当に?この子相当大変よ、相性のいい水に怯えるし。 それに、それだけじゃなさそう。きっとまだ何か変な理由があるわ』 「っ、」 『いいんじゃないか? 退屈よりマシだろう』 『まぁ、物好きにも程があるわね』 『付き合ってられない。解散』という様に、残りの精霊たちも水晶へ戻っていく。 そうして静まった部屋には、俺と大きな光の玉だけ。 『さて、人間。名は?』 「…トアスリティカ・リスト」 『トアスリティカ……悪くない。 我の名はエルバ。さぁ、契約を結ぼうか』 玉がパァッと輝き、徐々に形を変えていく。 「わ、ぁ……!」 キラキラ輝く透明な羽。舞い散る不思議な粒子。 群青からスカイブルーへとグラデーションする髪から覗くのは、まるで宝石の様に綺麗な深い青の瞳。 父様よりも背が高い、独特の衣装を着た男がそこにいた。 「変化など久しくしていなかったが、悪くない。 喜べ、そのような乱れた魔力でも契約してくれる心優しき精霊がいたぞ」 「っ、うぅ……」 喜べるわけないだろ! どうしよう、これって本当に成功でいいのか? 対話らしい対話もしてないし、心も通った気しないし…… 「なんだ、不満でもあるのか? それとも我に見惚れたか。悪くない感性だな」 「なっ、そんなんじゃなくて!ただ、こんなに大きな精霊見るの初めてだったから」 「ふむ。まぁ、そういうことにしといてやろう。 額を上げろ、契約を結ぶぞ」 軽くあしらわれ、高い位置にある顔が降りてくる。 そしておでこを重ねる為、手が俺の肩に乗せられてーー 「ひぁっ!」 「っ、」 何故か、触れられた箇所から電流の様なものが流れる感じがした。 なに? 今、何が起こった? よくわからず、びっくりして自分の両肩を抱きしめる。 精霊に触れられるってこんな感触がするんだっけ? ビクリと震えて、不思議な刺激が全身に広がって。 ティアにも確か聞かされてない。これは、なに……? 「は…はは……そうか、そうだったのか…… く、はははははっ!」 同じく暫く呆然と自分の手を見つめていた長身が、突然大きく笑い始めた。 「トアスリティカ・リスト」 「ぁ、な、なに」 「どうやら我は、 ーーお前のことを、心から待ち望んでいたようだ」 「ぇ、ーーーーっ!」 一気に距離を詰められ、腰に腕を回される。 触れられた感覚にまた声を上げそうになった瞬間、唇を綺麗な顔に塞がれた。 「んっ!? んぅ……ん、んんっ」 服の上からじゃない。直接肌同士が触れ合うそれに、さっきとは比べものにならない程の刺激が襲ってくる。 (なに、こ、れぇ……っ) 息継ぎの度漏れる声。自分のとは思えないほど上ずっていて恥ずかしい。 入ってきた舌に口内を掻き回され、ビクビク身体が震えるのも止まらない。 立っていることすらままならず、前の服を縋るように握ってしまって。 「ん、んぁぁ……は、ふぅん、ん、んっ」 いつの間にか、その刺激を追おうと自ら舌を絡ませていた。 ただただ気持ちよくて、もっと快感が欲しくて夢中で。 ここが何処なのかも忘れ、ひたすらに溺れる。 (ぁ…も、待っ……) だんだん、意識が遠のいてきた。 向こうにもそれが分かったのか、最後に下唇を吸われゆっくり離される。 ツゥ…っと伸びる唾液の糸が恥ずかしくて、ぶわりと顔が赤くなってしまって。 「契約完了だ」 「ぇ……?」 「口付けは額を重ねるのと同じ効果をもつ。 なんだ、最近の精霊士は知らぬのか?」 得意げに笑われ、ついて行けずに目を白黒させた。 駄目だ、ちゃんと考えたいのに頭が回らない。 クラクラして目の前が歪んでくる。 「よい、眠れ」 服を掴む指から力が抜けると同時に、力強い腕に包まれた。 「後のことは気にするな。 お前は、そのまま寝ているといい」 目蓋を覆うように手を置かれ、一気に眠りの底へ落ちて行く。 意識が消える瞬間、再び額に口づけをされたような感覚がした。

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