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「ほう…成る程……」
全てを話し終え、じっと前の顔を見つめる。
嫌なことも隠したいことも全部伝えた。
「引かないで」とは言ったけど、もしこれで俺の見方が変わったらどうしよう……
契約解除とか…言われたら……
「心配するな、契約は消さん」
「ぇ、」
「考えていることが魔力で手に取るようだ、お前もまだまだだな」
「っ、な!」
「だがよく分かった」
ニヤリとエルバが笑う。
「お前は人より魔力が多い。
にも関わらず何故こんなにも扱いが下手なのか気になっていたが、つい最近目覚めたのであれば納得がいく。
14年間眠ったまま身体が生きられたのも、その魔力があったからだろう」
「そう、なのか……」
「そして、やはりお前は水と相性がいい」
「え?」
「自分の死に場所に、わざわざ水のある場所を選んでいるからな」
「ーーっ!」
言われてみれば、確かに。
俺はあの日、何故か海まで行った。
たまたま持ってた金で行けたのが海のある所だったのかもしれないけど、なんで近くで死ななかった?
電車なんか乗らなくても、線路に飛び出せばすぐだったのに……
「それくらい無意識にお前は水に惹かれていたんだろう。それが結果的に悪い記憶として残っている、と。
ふむ、心配はするな。我が付いている」
「……え?」
「我は水を司る精霊。そしてそこらのものよりずっと強い力を持っている。
お前と水は切っても切れない相性なのだから、我がその恐怖を克服する手助けをしてやろう」
「ぁ、えっと、ありがとう……
というか、そんなにすんなり俺の話信じてくれるのか?」
「信じるさ。嘘は無いのだろう?」
「っ、ぅん」
全面的に信頼を寄せてくれるエルバに、なんだかむず痒くなる。
こんなに信頼している事を伝えられるのって初めてなんじゃないか?
心がじんわり温かくなるような、ホッとするような。
「それに、もしかしたらお前をこちらに呼んだのは我かもしれぬからな」
「……? どういうこと?」
「こういう事だ」
「っ、ひゃ、やめっ」
顎を触られグイッとエルバの方に向かされる感覚に、ゾクリと背筋が震える。
「これは〝共鳴〟だ」
「きょう…めい……?」
「あぁ。水や火など相性のいい者同士の中で、特に相性のいい者同士が出会った時に発生する。
触れた先で起こる魔力の融合が気持ちいだろう? これは奇跡に近い確率でしか巡り会えない非常に珍しいことだ」
この電流みたいなやつは、魔力だったのか。
「は、ぁぁ……っ、んっ」
まるで犬の顎を撫でるように指を動かされ、そのままツゥ……と首から肩へ降りてくる。
「お前が気持ちいと感じるように、我も気持ちがいい。
数百年も生きてきたが、まさか我の共鳴相手がこのような若い者だったとは……
その甘い声も震える身体も実に初々しい。はっ、いいな、実に愛いぞ」
「あっ、あぁぁっ」
着ていた大きめの寝巻きから両手を入れられ、耐えられずにベッドへ倒れ込む。
覆い被さってくるエルバにヘソから脇腹から全てを撫でられ、快感が止まらなくてビクビク震えてしまって。
どうしよう、どこも全部気持ちい。
感じる魔力に頭がぼうっとして、身体が熱くなる。
エルバはなんで平気なの? 俺よりいっぱい魔力があるから? それともずっと年上だから?
わからない、けれどーー
「ぁ、も、エルバぁ……」
「っ、トアスリティカ…」
じんわり浮かんだ俺の涙に、吸い寄せられるよう降りてくる顔。
あ、駄目だ、またあの強いのが来る。
口の中をぐちゃぐちゃに掻き回されて、気持ちよさに溺れて…訳がわからなくなって……
「ゃ…ぁ、ぁっ」
「トアスリティカ……」
「ひ、ぅ……」
バタン!!
「トア兄大丈夫!?」
「体調はどう?
まったく……契約中に倒れるとか前代未聞なんだけーー」
「…………ぁ」
扉付近で固まる2人。
「トア、兄? それ誰……」
「なんだ、また兄弟か? お前一体何人兄弟がいるんだ」
「は? え、精霊?」
「……あ、はは…」
混乱している弟と、共鳴を邪魔されて不機嫌になるエルバと。
「えぇっと、これはーー」
「勿論分かりやすくひとつひとつ説明してくれる気だよね? トア」
にこりと笑う裏に「心配したのに何だこの事態は?」という声が聞こえてくるティアに、とりあえず俺は「どいてくれ」とエルバへ告げたのだった。
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