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膨れ上がる不満
「ねぇ、聞いた? 今日の体育のこと」
「トアスリティカくんが倒れて保健室行ったやつでしょ?
あれ、精霊と抱き合ってたらしいね」
「そう。僕もちょっと怪我して保健室行ったんだけどさ、入れなかったよ。共鳴する分気持ちよさも違うのかな? 聞いてるこっちまで熱くなっちゃった」
「最近授業中に共鳴しないなと思ってたけど、抱き合うようになったからそんな些細なことしなくてもよくなったってやつ? なんかうざいね」
「本当。あんなに見せつけてくれちゃってさ。
僕らが何聞いても答えないくせに」
「高みの見物してるんじゃないの? 彼には関係ないもんね、もう共鳴相手見つけてるんだし」
「それにひとつ上だし僕らのこと舐めてるんじゃない? 出会って日も浅いしさ」
「うっざ、何が〝リスト家の眠り姫〟だよ。性格最悪じゃん」
「大体精霊と抱き合うってなんなの? 頭おかしいんじゃない? 長く眠ってた分常識なさすぎでしょ」
「トアスリティカくんから誘ったのかな。だとしたら相手の精霊がすごく可哀想。共鳴相手だから離れることもできないし……」
「なんか同じ精霊士として許せなくない?
邪な気持ちでやってて僕らより先に強い精霊と契約してて、しかも共鳴? ムカつくんだけど」
「メロティアニスも腹立つよ。
中等部では成績優秀でしっかりした奴だったのに、何で高等部入った途端あいつと一緒にいるの? 注意もされるし意味わかんない」
「こっそり共鳴相手との出会い方教えてもらってるんじゃない? あと精霊との抱き合い方も」
「やっばーそれ最悪じゃん。
そんなに淫乱になっちゃったの? なんだか残念」
「ねぇ、どうする? このまま一緒にクラスで生活するの僕やだよ。耐えられないんだけど」
「僕も。
ーーだからさ、もっかい眠ってもらおうよ。眠り姫に」
「え?」
「ここにいる全員の力合わせたら何かできるでしょ。いろんな種類の精霊と契約してるんだし」
「確かに。もう一回眠らせればまた14年くらい起き上がらないかも。その時にはもう僕らバラバラだから関係ないしね」
「あ、それとさ!
僕ちょっと2人が話してるの聞いたんだけど、どうもあいつ水が怖いらしいんだよね」
「え、水が!? 彼の相性水じゃん!」
「そう。なのにそれが怖いらしくて、今精霊と一緒に克服する練習してるんだって。
メロティアニスにそれを相談してたよ」
「へぇ、そうなんだ。普段の授業では普通なのにね。
……もしかしたら、量の多い水とか普段使わない水が怖いのかな?」
「あっはは変なの!相性いいものが怖いとか、精霊士として終わってる!だから身体繋げてんのかな? 僕のこと捨てないでーって」
「なんか見方変わって来ちゃった。
もう情けとか要らないんじゃない? やっちゃおうよ」
「うん」
「そうだね」
放課後の、締め切っきた教室の一角。
2人を除くクラス全員の矛先は一気に研ぎ澄まされ、標的を前に鈍く光を放っていた。
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