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大分遠いな…どこまで行くんだろう…… 広い校舎をどんどん奥へと進んでいく。 途中「僕らも呼ばれたんだよね」と別のクラスメイトとも合流し、数名で話しながら歩いて行って。 こんなに呼ぶなんて一体ティアは何を頼むつもりなんだろう。 というか、こんな所初めて来るけど道あってるのか? 言いようのない不安。 みんなの魔力はブレておらずいつも通り。でも、何故か嫌な予感がする。 この先に、本当にティアはいるのか………? 「……っ、ぁの」 「ねぇねぇ、そう言えば最近トアスリティカくんの精霊見てないけど元気?」 「ぇ、あ、元気だよ」 「そうなんだ!いつも見てたから気になって。 学校では出さないようにしたの?」 「そういうんじゃないけど……家で出て来てもらうことの方が多くなったかな」 「へぇ……ならさ、今も近くには居ないの?」 「うん。気配もないし、居ないね」 「ーーはははっ! そっかぁ」 突然、ぶわりと周りの魔力が変化し始めた。 それに足が止まって、動けなくなる。 「ぇ…なに……?」 「あのさ。僕、この前の体育中に保健室でしてた事、知ってるんだよね」 「っ、」 前にいた子がニヤリと振り返ってきた。 「精霊と抱き合うって、そんなに気持ちい?」 「な、抱き合うってそんなことは」 「してないの? あんなに善がってたじゃん。 やっぱり共鳴しながらってイイの?」 「ーーっ!ぅわっ」 両腕をそれぞれ取られ、挟まれるようにして歩かされる。 これ、罠だったんだ。 この先にティアなんかいるはずない。 しまった…早くどうにかしないとーー 「大体さ、お前精霊士に向いてないよ」 「……ぇ、」 「相性のいい水が怖いし、共鳴相手も困らせてるし。 克服する練習とか、あんなに強い精霊に何させちゃってんの? 勿体ない」 「っ、」 なんでみんながそのことを知ってるのかは分からない。 けど、自分も思っていたことを言われ頭がガツンとする。 「挙げ句の果てには手まで出させちゃってさ。 同じ精霊士として考えられないんだけど」 「うん、考えられない」 「名乗らないで欲しいよね。一緒に分類されたくない」 あぁ……そう、か。確かにそうだよな…… 俺1人だけの想いと思ってたけど、これは他の精霊士にまで迷惑をかけるものなのか。 仮にこの想いが成就したとしても、「人間と精霊士が結ばれる」という事実は築き上げてきたその地位を崩すことになり兼ねない。 邪な想いの契約は、精霊士としての誇りに傷をつけるのと同じだ。 それにも気づかないほど、周りが見えなくなるほど、俺は恋に溺れていたなんて…… 本当に、世間体を気にしていた頃の自分からは考えられない。 それほどまでに恋は……愛は、人を変えるのだろうか? 「さぁ、着いたよ」 重そうな扉の前。 中で待っていた別のクラスメイトたちに開けられ、背中を押された先にはーー 「ひっ!」 巨大な水の玉が浮かんでいた。 「あの水は僕らのオリジナルだよ。眠り粉入り。 だからあれが落ちてきたらすぐ眠っちゃうだろうね。 あぁ心配しないで、酸素の多い水なんだ。だから少しくらい水の中で眠っていても生きてられる」 「ぁ……そん、な…やめっ、エルバ!」 「無駄だよ、この部屋に聖霊は呼べない。 そういう魔法をみんなでかけたんだ、だからごめんね?」 「っ、ぅ……」 クラスメイトの口調から、あれが自分に落とされることは間違いない。 こんな窓もない暗い部屋で、あんなに大量の水の中にひとりで閉じ込められて。 咄嗟に呼んだ名前も、ただシィ…ンと部屋に吸い込まれていくだけ。 どうしよう、終わりだ。 もうひとたまりも無い。 俺は…俺は、またーー 「さぁ、眠り姫。 もっかい眠っときなよ」 「時間になったら助けてあげるから。リスト家に楯突くのは怖いしね。 それまでは暗い水の中で溺れているといいよ」 「ショックでもしかしたらまた14年くらい寝ちゃうかも? あははっ」 ドン!と強く押され、部屋の中央に倒れ込む。 クラスメイトは全員出て行って、扉がゆっくりと閉まり始めてーー 「待っ……て…待って、お願い!」 「なにがお願いだよ、馬鹿馬鹿しい。 ーーお前、気持ち悪いんだよ」 「ーーーーっ、」 バタンという重い音が響き、室内が真っ暗闇になった瞬間 頭上から、大量の水が一気に落ちてきた。

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