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夕焼けが見える、綺麗な窓の外。 母さんも帰って夕食も終わり、1人の時間。 個室な分、静かでとても落ち着ける。 俺は…どうすればいいんだろう…… もし向こうの世界が本物だったとしたら、向こうの身体は今眠っているはず。俺がこっちの世界にいるから。 逆に俺が向こうに行けば、こっちの身体は眠ってしまう。 一体どうすれば? 俺がどちらか片方の世界を選べば、ふたつある身体はひとつになるのか? 「えら、ぶ……」 そう言えば、俺は今まで何かを選んだことが無かったかもしれない。 いつも受け身で、誰かが選んでくれるのを待ってたり周りを見ながら選んだりしてきた。 こっちの世界で幼い頃から感じる違和感に蓋をしたのも、両親が悲しむから。 向こうの世界で精霊士になる決断をしたのも、「俺がそうしたい」って思っての行動だったけどそれは本心からだったか? 何故決める前に死んだ母様のことを訊いた? 今だってそうだ。パンフレットの中から高校を選ぶのは、母さんのため。 ほら。 俺は、これまで自分の気持ちだけで何かを選択したことなんか、無い。 「………」 普通に考えて、俺はこっちの世界を選ぶべきなんだろう。 向こうには兄弟がいる。少なくとも家族は多いままだ。 こっちでの両親の子どもは俺だけ。俺が消えたらきっと寂しい思いをする。 だから、俺はどれだけキツかろうとこっちの世界を選ぶべき。 ーーでもそれは、本当に本心……? 恐らくこの選択が、自分の生涯の中で最も大きなものになる。 それなのに、俺はまた周りを見て答えを出している。 いいのか? それで。 俺の選択は…本当にいいのか……? 「っ、けど」 また向こうで目を覚ましたら、エルバに嫌がられてしまうかもしれない。 気まずいと、また避けられてしまうかもしれない。 そうだ、だから眠ったままの方がいいんだ。 というか、そもそもこれって無理に選択しなくてもいいんじゃない? 身体が2つあるまま、俺がこっちで生活していれば、きっとーー 「…………そんなの…ゃ、だよ……っ」 ねぇ、エルバ。俺、寂しいんだ。 どうかお願いだから、お前の側に…居させて。 「………っ!」 ガバリと立ち上がり、スリッパを履く。 俺は水と相性がいい。そうだろう? ならばきっと、この場所からも辿り着けるよな…? リハビリのおかげで大分動けるようになった身体で、駆け出して すれ違う人たちを避けながら、病院の外に出た。

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