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森 4
「ッう……ふ……ッ」
「感じるか?」
「……こそばゆい、だけだ……」
強がるものの、足に力が入らない。緊張でドクドクと心臓が脈打っているのが伝わりやしないかと気が気でない。言葉の通じない相手であればまだ羞恥など感じることはなかっただろうに、なまじ意思の疎通ができる分たちが悪い。一度距離をとりたくて、スライムの拘束から抜け出ようと背を逸らすが、触手はガッチリとサラマンダーの身体を固定し身動きが取れない。その状態で優しくすりすりと甘い快楽を与えられるのは拷問に近かった。
「もう、いいだろ、ッ……早くしてくれ……」
「時間をかけると言っただろう、そんなに急くな」
たしなめるように、触手がサラマンダーの首筋をなぞる。
「っは、あ」
「体液の分泌は、体から余分な力が抜けているときの方が促されやすい。もっとリラックスしろ」
パルケラィアが言う。深い森の中だ。誰に見られることもないが、屈辱感は拭えない。なるべく声を抑えていようとすると身体に力が入る。唇を引き結んだサラマンダーを見ると「強情だな」とあきれたように言う。
固く紐を結んだブーツにまで侵食してくるスライムに、正直なところサラマンダーは焦りを感じていた。好きなようにしろと言ったものの、この結果は予想に反している。
捕食、と聞いて、もっと作業的なものを想像していた。しかし現実は、人間相手のセックスと何ら変わりがない。冷たいスライムに肌が慣れてきて、そのぶん感触に意識を奪われる。スライムの中には服を溶かすものもいる、と聞いていたが、パルケラィアは一枚一枚を丁寧に剝いでいく。寒い外気に肌が触れそうになると、風除けになるように覆いかぶさって、何気ない素振りで首筋にキスをする。それだけのことなのに、耳が燃えるように熱くなってくる。
ベストを脱がされると、シャツとズボンだけになる。自らを守るものが取り払われた心地で落ち着かない。挙動に戸惑いが混ざるサラマンダーの服の下に触手を滑らせ、身を寄せたパルケラィアが、荒くなってきた呼吸とともに上下を繰り返す胸板を、落ち着かせるように優しく撫でた。
「……パルケラィア、お前は……」
何がしたい、と問いかけようとしたとき、目が合った。熱っぽい視線に射抜かれ、身体の芯がじわりと燃えるような錯覚に襲われる。魔物がこんな目つきをする、のか。サラマンダーの前髪を除けてやりながら、ふとパルケラィアが目を細めた。
「サラマンダー」
いとおしげに名を呼ばれる。偽名なのに、呼ばれただけで腰に甘い痺れが走る。
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