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森 5
他人の前に無防備に身体を晒し、好き勝手に弄らせる事の何が楽しいのか、ずっと疑問だった。今、それが理解できてしまいそうなのが怖い。怖いから目を逸らすしかない。だが責め手は緩むことなく、ベルトが外されたズボンの中に触手が入り込む。
「目を合わせてくれないのか、サラマンダー」
声のする方向から顔をそむけた。目を合わせたら、おしまいだ。何がかは分からない。だが確実に何かが、終わる。顎を伝って落ちた汗が、水のような質感のスライムに垂れる。
「そうか……残念だが、仕方ない」
腿のあたりを滑る感触。こそばゆいような心地とともに、手で覆った隙間から、もっと、と口をつきかけた。頭を駆け巡るのは混乱、答えの出ない問い。パルケラィアはいまどんな顔をしているだろう。当惑を自覚しながら、は、は、と短い呼吸を繰り返す。怖い。怖いのに、とても、
────気持ちがいい。
ぴりぴりと肌が粟立つような感覚に抗いながら、サラマンダーはいやいやをするように首を振っていた。だが快感というのは、耐えれば耐えるほど絶頂の際の爆発力が大きくなるもの。ふぅふぅと息を荒げるサラマンダーはもう限界が近かった。顔を真っ赤にして身悶えする彼を優しく見下ろすパルケラィアは、上体を起こさせるとするりとシャツを脱がし、素肌に直接触手を這わせる。
「っ、く、ふぅ! あっ、あん……」
喘ぎ声を我慢できなくなり、慌てて指を噛むが「痕が残るぞ」と無慈悲に引きはがされる。スライムが、熱を持った肌に浮いた体液を舐め取る。背中を巨大な舌が這うような心地で、ズルズルとした感触が何とも言えず気持ちいい。
「あっ……ああ……」
陶酔するサラマンダーだったが、下を触られる感覚にびくりと体を起こした。
「ふむ、中も変化しているな」
パルケラィアはまるで検分するかのように、細い触手を使いナカを押し広げていく。慣れていないためか圧迫感があるが、流体のスライムは痛みもなく中を侵食していく。とはいえ、内側を触られるのはまだ違和感が強い。
「ま、待っ……!」
声を上げて押しのけようとした、その最中。顔を上げたパルケラィアの、乱反射する瞳がこちらを射抜く。
目が、合ってしまった。頭の中で、何かがバチンと弾けた。
「ッうぅ、あ!」
瞬間、感度が跳ね上がった。体重を支えていた腕からガクッと力が抜ける。
「っ、サラマンダー?」
体勢を崩したのを、パルケラィアが触腕で受け止める。はずみでナカを擦られ「はぅ…!」と小さく悲鳴を洩らした。痛みこそあるが、それよりも腰のあたりが甘だるい。身体に力が入らない。震えながら、伸ばされた腕に顔をうずめる。
「怖いのか、止めるか?」
口に出してから、パルケラィアは自身の発言に驚いた。いまのは対価云々から逸脱した言葉だった。そしてそれ以前に、
「(止める? ……有り得ないな)」
涙を流しながら肩口にすがりつき、荒い息を吐いているこの男を──逃がしてやるなんて選択肢が、あるか?
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