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森 6

 果てた、という事実を受け止めきれないサラマンダーは、パルケラィアのどこか冷めた目には気付かない。声だけが、彼がいま何を考えているかの判断材料だ。 「よかった、目を合わせてくれないので嫌われたかと思った」  声音は優しい。赤色の癖毛に指を通し、あやすように撫でる。そして自然なしぐさで頭を抱きかかえると、身を固くするサラマンダーの耳元に口を近づけ囁いた。 「もう少し、頑張れるか?」  答えも待たず、ナカの触手がくねるように動く。くち、くち、と蜜壺をかき回す音に羞恥がつのった。待ってくれ、と叫ぶが唇が震えて声にならない。複数の触手に蹂躙されるなか、一点を擦られたとき腰が跳ねた。 「ッん!」 「ここか」  イイトコロを探り当てたパルケラィアは、そこに触手の先端をこすりつけるように動かした。それだけにとどまらず、タップするように叩き、うねるように押し上げ、くすぐるように撫で、あらゆる刺激を試す。突かれるたびに快感の針でメッタ刺しにされ、堪えきれず声を上げてのけぞる。 「あ! ひぁあッ、あぁ!」  生理的な涙があふれ視界を曇らせる。知らない、こんな感覚は知らない! 「暴れないでくれ」と穏やかに声をかけながら、パルケラィアは一番好まれる刺激を試行錯誤する。重なる快感に意識が朦朧とする中、サラマンダーは力の入らない腕でパルケラィアを押しのけた。 「うぁ、や、やだ、イヤだッ、こわい……!」 「──なるほど、理解が及ばないのだなサラマンダー。大丈夫、怖いことは何もない。身をゆだねてくれ」  スライムが怯えるサラマンダーを包み込む。責め手を緩め、安心させるため目線を合わせる。顔をもっとよく見ていたくて、赤毛をかき分けて耳にかけた。 「確かに性急だったかもしれないな、すまない。だが、私はお前に気持ちよくなってもらいたい。悦んでほしい。どうか拒まないでくれ……」  言葉を連ねつつ、そうか、自分はそんなことを考えていたのか、と他人事のように思った。魔物の中でも変わりもの、と噂されるパルケラィアであるが、今となってはその評価は正しいと受け止めざるを得ない。自分はおかしい。そして、この男に完膚なきまでに狂わされてしまった。サラマンダーは戸惑ったように視線を外し、不安そうに口元に手をやる。 「……わ、からないんだ、俺は、どう、すれば……」 「心配するな、愉しめばいい」  昼間、学問を教えたときと同じトーンで諭す。だが正直、表を取り繕うのに意識の大半を裂いていた。これはもはや捕食ではない。瞳の奥に暗い独占欲を滾らせるパルケラィアに、顔を逸らしたサラマンダーは気付けない。 「極論、そのままでいい。ただ受け入れてほしい」  肉襞をじっくりと擦り上げると「あン……」と控えめな吐息が洩れた。口を覆ったサラマンダーに対し、「その調子だぞ」と微笑みかける。逃がしはしない。  動物的な衝動に身を任せるのは、サラマンダーの最も苦手とするところだった。楽しめと言われてもどうすれば良いのか分からない。 「そうだな……身体の力を抜いて、深呼吸してみろ。触れている箇所に意識を集中して、感触を貪欲に味わうつもりで」  アドバイスしつつ、パルケラィアはサラマンダーのイイところをゆっくりと往復するように責める。この触り方が一番リラックスして快感を受け入れられるはずだ。サラマンダーは素直に深呼吸し、目を閉じた。半開きの唇から唾液が垂れる。 「はぅ、ああ……」 「そうだ、上手だぞ」  体液をぬぐいながら励ますパルケラィア。教育はまず褒めてやることから始めなければ、と腹の底で考えつつ、調教を進める。

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