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森 8

 スライムから分泌される粘液と汗で、ぐっしょりと濡れたシャツが肌にはりつく。苦しげに涙を流すさますら美しい。欲しい。欲しい。この男が、彼のすべてが欲しい。暴きたい。芯まで、私の、ものだ。 「まって、まってくれ」  何がパルケラィアをヒートアップさせたのかが分からない。人間的な紳士らしさをかなぐり捨てた彼に、サラマンダーは焦りと恐怖を感じた。「待てない」と返す声は、泡のはじけるような音なのにどこか獣に似ていて、身を固くするサラマンダーの腿に触手が絡みつく。 「それに、まだ対価には足りない」  脚をこじ開けられ、淫芽をくすぐるように触られる。自分でも触れたことがない箇所は敏感で、触手の先が降りただけでも飛び上がりそうなほど強い快楽に危機感を覚えた。 「やっ、やめろ!」 「お前の選んだことだ」  短く答えたパルケラィアは「マナ消費が大きいが……」とひとりごちつつ、触手の一本を二人の間に掲げた。魔力の気配が濃くなり、触手が泡立つように変形していく。それがおさまったとき、現れたのは細かな毛のついた触腕だった。家畜を洗うブラシと似た形状だ。 擬態の応用だろう。ここまで繊細な変身ができるのか、と状況も忘れて感嘆するサラマンダーは、その触手が敏感なところを撫で上げた瞬間、強い快感とともに我に返った。 「あッ⁉ はァん!」  軽く撫でられただけで、脳天から足の先まで電流が走る。撫でられた感触が残っていて、下腹部がゾクゾクと疼く。 「クリトリスを触ったことはなかったか?」  細い毛の付いた触手が表面を撫でる。神経がむき出しになったそこを、しゃわしゃわと柔らかいブラシの感触が優しく甘やかす。 「あ、あッ! あん、あ!」  声が抑えられない。自分のものではないかのようにガクッ、ガクッと腰が揺れる。甘く尾を引く嬌声に耳を疑った。 「(俺の……俺の声なのか⁉)」  我慢しようとしてもできない。パルケラィアはまだ試行錯誤しているようで、それだけが救いだ。 「あッ……あぅ……んぅう……」  びくびくと身体を震わせながら、下半身を捩るさまは官能的だった。下からカシュカシュと弾くと、吐息と喘ぎ声が混ざったような声を上げる。 「んはぁ! っふぅ、くッ」 「ココが好きなのだな、締りが良くなる」 「っ、し、知るか、そんなこと、うぅ……!」 さきほどあられもない姿を見られたばかりで、言い返す声には覇気がない。「しかし、意外だ」とパルケラィアが口にする。 「処女だ、と聞いたが、ナカで果てるには普通、調教が必要なものだろう」 「? 催淫作用があるんじゃないのか……?」 「スライムの中には、捕食効率を高めるためそういった能力が備わっているものもいる。だが私は時代遅れでな」  それが意味するところを悟ったサラマンダーが顔を真っ赤にするのを、パルケラィアは微笑ましく見守る。 「なかなかに素質がある」 「うるさい」  顔をそむけたが、ブラシ触手を下げたパルケラィアが、粘液を垂らす触腕をずるりと持ち上げたのを見て、びくりと肩が跳ねた。何をされるにしても絶対にろくなことではない。それでも拒む気は起こらなかった。

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