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森 10
シナプスが光と熱を発して燃え尽きるような絶頂。あれから何度もイかされて、頭が変になりそうだった。自分ではコントロールできない痙攣で体力をごっそり削られている。乱れた髪が、汗でべっとりと肌にはりつく。
「もう、もう無理だ、パルケ、ラィ……」
ガラガラの喉で息も絶え絶えに懇願するが、パルケラィアの目は依然らんらんと輝いていた。魔物に疲労の概念はない。ただ、液体の溜まった触腕を持ち上げると、先をサラマンダーの口腔に容赦なく突っ込む。
「んぶっ⁉」
「飲め」
拒否権もなく、無理やり液体を喉に流し込まれる。飲み込んだのを確認し、パルケラィアはふっと笑みを浮かべる。
「体内で生成した回復薬だ、体力はこれで補えるな」
体力が戻っても、蓄積された快感はそのままだ。まだ続けるつもりなのか! 一瞬ですべてを悟ったサラマンダーは目に涙を浮かべながら、いやいやをするように首を振る。
「待てッパルケラィア、これ以上は、こっ、壊れ……ッ!」
「大丈夫だサラマンダー、人間そう簡単に壊れはしない」
穏やかな微笑みを返すパルケラィアは、赤い髪をひと房すくい取って、うっとりと頬ずりをする。
「不思議な心地だ、サラマンダー。私は初めて、恋というものを経験しているのかもしれない」
「は、あ……⁉」
思いもかけない発言に、抵抗も忘れて見つめ合ってしまう。捕食ではなく、魔物が恋愛感情で、自分を……? 理解が及ばないサラマンダーを再度草の上に押し倒し、パルケラィアは人間めいた仕草で目を細めた。
「恋は楽しいものだな、サラマンダー」
微笑みかけるスライム越しに、満月が煌々と輝く。月光がゲル状の身体に乱反射して、自由の象徴のように輝いて見えた。厄介なものに好かれた。トラウマはもう感じないものの、もはや別の脅威だ。それでも、なぜか。
スライムが自分に合わせて身体や腕を作り、愛し合うように指を絡める。合理的とは言えないそれらの行為のひとつひとつに、絆されていく。俺は中身までどうにかなったのだろうか。自嘲しつつも、サラマンダーは伸ばされた触手を振り払わなかった。
第一話 森 完
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