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「守護騎士ルーファスよ、この者が…真の“神子”に相違ないのだな?」 「…はい。間違いありません、大司教トリント様。」 ルーファスによって、王子様からの誓いのキス───…みたいなシチュエーションを、不意討ちで食らわされたオレは。 お約束にも見事に撃沈し、内心悶絶。頭の中は完全に真っ白、全く機能しなくなり… 半ば彼に抱えられるようにしながら…あれよあれよという間に、何処ぞへと連れて来られてしまったのである。 …んでもって、それが何処かって言うと。 現実世界で言えば、世界遺産とかにありそうなくらい、巨体で神秘的な建造物であって。 位置でいうと、宮殿?…とやらの敷地内にあたるんだとかなんとか。 ルーファスが言うには、この世の救世主である“神子”を神格化させ、女神と共に奉り敬うための神殿───…その中でも、この国で最も大きな神殿なのだそうだ。 パッと見たところ、オレの世界にある教会なんかとは、なんとなく違った印象を受けるのだけど。 それは建物が、所謂ファンタジーな様相で構築されていて。竜やら女神様みたいな幻想的な装飾が、柱や壁なんかに施されていたからかもしれない。 「そうか…だが、」 こんなことは前代未聞だ────…と。 トリント様なるお爺さんは、オレを凝視しては頭を抱える。 ここに到着してすぐ、ふたりしてずぶ濡れだったもんだから着替えを用意して貰い。バタバタと休む間もなく、ルーファスから、このお爺さんを紹介されたんだけど…。 この人はここ、大神殿の最高責任者だそうで。 まぁ…紹介されなくてもオレ、この人の事たぶん知ってるんだけど… そのトリント様は困ったよう、額にううむっ…と手をやり唸った。 「過去に例は無いのでしょうか?」 「全て遡れば、あり得なくもないかもしれぬが…。我が国に残された文献の中では、まず聞いた事がないな…」 さてどうしたもんかと…司教様と騎士様、双方の視線を受け。なんだかいたたまれず、身を竦めるオレ。 「だが容姿にしても、この国には存在せぬ黒髪と見馴れぬ顔立ち…。それに“守護騎士”であるお主が、そうだと申すならば…」 確かなのだろう、トリント様は自身に言い聞かせるよう頷く。と… 「……ま、なんとかなるだろう。」 次にはその場にいた神官達が、思わずズッコケちゃったくらいに。彼はこともなげにそう、言い放った。 え?なんかすんごく重大そうな話してたっぽかったけど。本当に大丈夫なのかな…? 「では、よろしいのですか…?」 ルーファスもこれには拍子抜けだったみたいで。 多少の困惑を浮かべつつ、再確認していたのだが… 「良いも何も、仕方がないだろう?が来ちゃったんだから。」 なるようにしかならない───…大神殿の最高責任者は、その厳格そうな役職らしからぬ物言いでもって。 あっさりとその場を、収めてしまうのだった。 …てか、こういう立場の人って大抵、頭の固い嫌なヤツ~ってイメージあるけどなぁ…。 トリント様はちょっと違うようで。外見に似合わず、随分とオチャメなお爺ちゃんみたいだ。 「ともかく…今日の所は、神子様をお屋敷の方へご案内して。陛下へは私から報告しておくから…」 半ば強引に話を纏め上げると、トリント様はいそいそと去ってしまった。 残されたオレとルーファスは顔を見合せ、思わず苦笑したが… 「では…セツ殿。改めまして、これから貴方様の住まうお屋敷へと、ご案内致しましょう。」 そう畏まり、流れる動作ですすっと差し出される手。 え…コレってこっちじゃお決まりなのかな? 女の子じゃあるまいし、男が男にエスコートされるとか正直恥ずかしいんですけど…。 「セツ殿?」 なのにルーファスのキラキラ(まなこ)で射抜かれちゃうと、どうしても断り切れなくて…。 内心ドギマギしながらも、おずおずと自分の手を差し出し、重ねてみれば。ルーファス様は、嬉しそうに満面の笑顔を湛えて…オレの手をゆっくりと引き、(いざな)った。 ぴゃああぁぁ…眩しすぎるぅ…

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