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⑤
「しばらくこちらの部屋で、お待ち頂けますか?残りの守護騎士達も、直ちに連れて参りますので…」
そう一礼し、部屋を一旦後にするルーファス。
待ちながらオレは、メイドさんが運んで来てくれたお茶を勧められ、一口それを啜ってみた。
あ、結構おいしいかも…さっきまでずぶ濡れだったし、なんだか温かくてホッとするなぁ…
(残りの守護騎士ってことは…)
そういうことだよな…と。
なんとなく、この先の展開を予測する。
まあ…ルーファスや大司教のトリント様が登場してきた時点で、そうだとしか思えないんだけどさ。
百歩譲って、オレが神子だってことはだよ?
設定上、あのゲームの主人公…ってことに、なるわけだよね…?
ヲタク女子を、瞬く間に虜にした人気乙女ゲーム
『初恋♥守護騎士様 』。
内容的には恋愛シュミレーションを軸に、主人公である少女を神子として育成しつつストーリーを展開し。目当ての美形ナイト様達と接して好感度を上げながら、各エンディングを目指す…というもの。
戦闘システムは女子向けに簡素ではあったけど。
ちょっとしたロールプレイング要素も盛り込まれてたため、男のオレでも普通に楽しめたと思う。
てか、恋敵だったキャラクターのゲームにハマるってのも妙な話だけどさ…。
それはさておき…肝心のストーリーも、王道一直線!…って感じで。
普通の女子高生がある日突然、異世界『グローシア』へと召喚されてしまい───…的なオープニングで始まり。
この世界の平和は一定周期ごとに不安定になり…数百年に一度、代々の神子が施したとされる瘴気を抑える為の結界っていうのが、弱まってしまうんだけど。
そうなれば封じ込めてた瘴気が溢れだし、魔族達の力が強まってしまう。
その封印の魔法ってのが、グローシアの人間には扱えない神の力とされ…。“神子”という存在が、他の次元から神によって召喚され、代わりに世界を救ってくれる──…というのが、大まかなあらすじってところかな。
エンディング的には、単に世界を平和にするってだけの通常ルートもあったけど…。
乙女ゲームの真髄は、やっぱりイケメンキャラクターと恋してなんぼ…なわけで。
そこから個別に主軸となるストーリーだとか、幾つかのルート分岐があったのを…つい最近、自ら体験したので良く覚えてる。
何気にルーファスのルートは、メチャクチャ感動モノでさ。ムダにハマって周回クリアしちゃったしなぁ…。
失恋した反動とはいえ…ホント、意味解んないよね。
…とまあ、あのゲームまんまの世界や国名、加えてルーファスやトリント大司教という、主要キャラクターまで登場してきたわけだから。
今から来るっていうのも、恐らくはルーファスと同じ天命を担う者…即ち、残る守護騎士の皆さんに間違いないと思う。
確か守護騎士は全員が攻略対象で。
ルーファスを入れて4人…プラスもう1人、神子付きの教育係ってのがいたはずから───…
と…そこで扉がノックされ、ドア越しにルーファスの声が聞こえて。どうぞと応えれば、扉がゆっくりと開かれ、彼は律儀に一礼する。
そうしてルーファスを筆頭に、後ろに控えた面々も皆同様に続くと…ぞろぞろと入室してきた。
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