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「セツ殿、こちらに控えるのが私を含め、貴方をお護りするために選定された守護騎士の者達です。」 説明して、ずらりと並ぶ男達を示すルーファス。 そんな彼らの姿を目の当たりにしたオレは、やっぱりなぁ…と思わず嘆息を漏らした。 「手前の者から紹介を─────」 「あ、たぶん知ってるから大丈夫…」 ルーファスを手で制し、苦笑するオレは。 彼の代わりに自らが答える。 「ピンク色のがロロアーノ・ミューストン、赤い短髪がジーナ・バレットだろ。んで、金髪がアシュレイ・リンギスに…緑の髪に眼鏡の人がヴィンセント・フレイマー…で、合ってたかな…?」 因みに最後の1人は騎士ではあるものの、守護騎士とは違い神子の教育係のような役割の人物である。 とまあ…彼らからすれば、こちらの世界に来たばかりで。しかも初対面であるオレが、迷いもなしにズバリと名前を言ってのけちゃったのだから。 オレ視点でいえば、予想通りの反応なんだけども。案の定ルーファス達は皆、驚いたよう目を丸くした。 「へぇ…神子というのは、そういう事まで分かっちゃうものなんだねぇ。」 凄いなぁ~と、緩い感じで一番最初に口を開いたのは、金髪美丈夫のアシュレイという騎士で。 感心したよう微笑み、口笛を鳴らす。 彼は、あのゲームの攻略キャラクターの中だと最年長になり。真面目で誠実なルーファスとは対称的で飄々とした、とらえどころのない性格の持ち主。 イメージとしては、妖艶な美貌で女性を虜にするナンパキャラ…って感じかな?乙女ゲーム界隈にはよく見るパターンの登場人物なようで。 こんな緩い雰囲気ではあれど、一応武芸はお手のもの。得意武器の槍は、かなりの使い手だそうだ。 「アシュレイ殿、もう少し場を(わきま)えて頂けませんか?」 神子の御前ですよと窘めるのは…若葉の如く鮮やかな緑髪の青年、ヴィンセント。 清潔に刈られたそれは、襟足だけが長く伸ばしてあって…そこがちょっとだけルーファスの髪型に似ている。 一見して冷徹そうな眼差しには、黒縁の眼鏡を掛けており…。紺色の軍服もカッチリ着こなしているような、まんまクールで真面目な人物だった。 さっき言った通り、彼だけはルーファスやアシュレイ達とは役割が違い、守護騎士扱いじゃなく。 以前は治安部隊などにも所属していた騎士ではあったんだけど。 守護騎士の資質も充分にあったのと、その頭脳や兵を纏めあげる指揮官としての才能も買われて…。神子の指導や王宮との橋渡し役として、攻略対象に入っているというわけ。 勿論このキャラクターも女子ウケ間違いなしな、インテリ系イケメンさんである。 「相変わらず頭カッチカチだよなぁ~、ヴィンセントは!神子っつっても俺らとおんなじ人間なんだろ~?」 そう言って「なぁ!」とオレに同意を求めるのは、ヤンチャな笑顔を携える守護騎士ジーナ。 いきなり話を振られてビックリしたけど…。 つられてウンウンと頷けば、ジーナはニカッと八重歯を覗かせ笑った。 人懐っこいそれが、彼の人柄を物語る。 「ほら~神子も良いってさ。話解るじゃーん!」 守護騎士に選ばれる者の家系には、稀にだけど優れた力を持つ者が生まれるらしく…伝承によると、先祖が神子と結ばれ交わったために。多少なりとその血を受け継いだ、子孫だったりするんだとか。 それ故、凡人にはあり得ない魔力量とか、身体能力を有してるらしい。 ひとたび守護騎士に選ばれれば、優遇され身分も保証されて。貴族とも同等…むしろそれ以上の名家として扱われているんだそう。 ジーナも有名な格闘一家の生まれで。 先祖の代で守護騎士などの優秀な人材を輩出し、武勇で名を馳せた実績がある名家だったから。 神子を守護する事を家訓として、日々精進してきた口だろう。 年は確か15くらい、まだ背もオレより少し低く。 成長途中の、あどけなさを残してはいるけれど…彼もまた、立派な選ばれしナイト様のひとり…なのである。 こういう愛嬌があってヤンチャなタイプのことを、弟キャラって言うのかな?

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