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⑦
「良かったぁ~、神子様が優しそうな人で!」
最後はキュートなピンクヘアーのロロアーノ。
攻略対象の中でも、彼は最年少にあたるのだけど。
目が合えば「ボクのことはロロって呼んでね~!」なんて、愛らしい笑顔を見せるから。
一見すると女の子かと思うくらい、華奢で可愛いらしい。
とはいえ彼もゲーム上では、恋愛対象だって言うのだから…。ヲタク女子の許容範囲ってのは計り知れない。
「今後セツ殿は我々と共に、この屋敷にて生活して頂くこととなります。」
“神子”は世界を救う奇跡の力を有するため、それに伴う伝説や噂が人々の間で数多く飛び交っている。
時にそれが、疚しい者の手によって神子の身を脅 かす火種にもなり…。私欲のため、神子を欲しがる者は…魔族叱り人間叱り、何処にでも存在するという。
だからこそ、国自らが率先して動き。選定した優秀な守護騎士をその傍に置き、常に護らせるのだそうな。
「神子殿からも、何かございませんか?」
一通り彼らの自己紹介なんかが終わり。いかにもまとめ役…といった雰囲気のヴィンセントから、オレへと話を振られる。
そうして改めて、守護騎士達を見やるけど。
正直、この光景が現実なのか夢なのか、未だに判断出来ないのが本音だった。
でも…
「えっと、オレの名は守山 節……セツって呼んでくれればいいよ。あと、いきなり神子様とか言われても、よく分かんないし…オレはそんな、大層な人間でもないからさ!そのっ、敬語だとなんか萎縮しちゃうし。みんなもジーナみたく気軽に喋ってくれると、助かるんだけど…」
出会ってすぐは、ルーファスの話し方もまだ普通だったのにさ。オレを神子って言い出した途端、変に畏まり始めたもんだから。
なんていうか、ああいうの落ち着かないんだよなぁ…。
しかもオレ、男なのにさ。ルーファスみたいな美形に、お姫様みたいな扱いされると。どうしていいのか分からないというか、妙にこそばゆというか…。
それ以前になんかもう『オレ=神子』確定で、話進んじゃってるけど。それも絶対何かの間違いだと思うし、まだ夢かもって半信半疑でもあったから。
ただでさえ現代の純日本人、このファンタジーな世界観に免疫が無さ過ぎて。雰囲気に飲まれちゃうと、メンタル消耗ハンパないからね!
せめて彼らだけでも…年だって近いんだし…ていうか、ゲームしてて変に親近感もあったからさ。
どうせなら普通に接して欲しいなぁ~…なんて、思ったんだけど。
「さんせ~さんせ~!俺も堅っ苦しいのホント苦手だからさ~。いやあ、お前メッチャ話し解るヤツで助かるわ~!」
「ボクもボクも~!ヨロシクねっ、セツ~!」
さっすが年少組は理解が早い。ジーナとロロはすぐさま砕けた笑顔で以て、快諾してくれた。
やっぱ子どもは、こうでなくっちゃ!
「僕も端から、そのつもりだよ~セツ。」
ヨロシクね?と慣れた仕草でウインクするのはアシュレイ。
彼も性格的には自由人だから、全く異論無いようで。オレにももれなく、色気たっぷりに微笑みかけてくれる。
「私は元より、こういった性格なので。」
ヴィンセントに関しては、あくまでこのスタイルらしい。まあ確かに彼のようなタイプの人間が、いきなりタメ口でって方が逆に違和感あるかも。
ゲームでもずっと、敬語キャラのままだったし。
「私は…」
最後に口を開くルーファスは。
何やら葛藤するよう、伏し目がちに口ごもってしまったが…
「私は…幼少よりずっと、神子は特別な存在だと…命を砥して護るべきものなのだと…教えられてきました。」
もしかしたら、ルーファスが思い描いたそれは、神様だとか女神様に近いような。何より尊ぶべき存在だったのかもしれないけれど…。
実際、神子って言われてるのはオレ…なわけで。
残念ながら神でも女神でも、ましてや主人公然とした愛らしい乙女でもない…ごく普通の、一般男子でしかないんだからさ。
オレがせめて、ゲームと同じ女の子だったなら…
多少なりとも違和感無かったかもだけど。
実際は男のオレがだよ?特にルーファスみたいなキラキラ美男子に、ワレモノのように大事に扱われるとかさ…恥ずかしくて困るんだよなぁ~。
生身のルーファス様、マジで破壊力ハンパないからね…
「それでもさ、その…なるべく自然にしてて欲しいんだ。ほら、オレ達ここでさ…とりあえず同居すんだろ?だったら友達とか家族みたいにさ…気楽に接した方が、お互いにも良いと思うんだけど…」
な?とルーファスを見上げれば、まだ少し戸惑っていたけれど…
「……承知、した。」
そう応え苦笑する様は、まだまだ格式ばった物言いではあったものの…。多分それは彼の人柄もあるのだろうと、一応納得し受け入れた。
本当に真面目なヤツだよなぁ、ルーファスって…。
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