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「ルーファス、かぁ…」 アイツは初対面にも関わらず、一切の迷いも無いまま…オレを命懸けで守るんだと誓いを立てた。 オレが世界を救う“神子”だから…と。 あんなイケメンにド直球で言われたら、余計その気になっちゃいそうなんだけど…。 「アイツ、オレの恋敵なんだよなぁ~…」 「何の話ですか?」 「そりゃお前の────…って、ギ~ャッ!!ルーファスぅ…!!?」 ベッドに座り、足をプラプラさせながら独り言を喋っていると…。まさかまさかの本人に声を掛けられて。 不意討ちを受け、オレは情けない悲鳴を上げ狼狽える。 「申し訳…ない。ノックをしたら、私の名を呼んでいたので…」 「へ?…ああ、そっかそっか…」 頭を深々と下げるルーファスに、赤面するオレ。 考え事してたつもりが、いつの間にか声に漏れてたようだ。危ない危ない… 「えと、どしたの…?」 顔の火照りも幾分か治まったところで、何事かと訊ねたら。すぐに真剣な表情へと切り替え、オレの様子が気になったのだと答えるルーファス。 「セツ殿がいらした世界は、どのような所…なのですか?」 心配するよう見つめる彼の瞳は、一点の濁りもなく…裏の無いその優しい人柄が、オレの邪な心を揺さぶる。 さっきも言ったけど、恋敵…だったんだぞ…? 「…まあ、こことは全然違うかなぁ…」 現代に蔓延(はびこ)る文明の利器…携帯電話や家電製品やらは、勿論皆無。便利さに慣れた人間には、ちょっと不便かもだけど。 水道や、温泉等を利用したお風呂にシャワーなんかは、この世界にも存在していて。トイレもちゃんとした水洗だったし、現時点ではそれほど不便は感じていない。 現代で言うガスや電力というものは、さすがに供給されてはいないけれど。 代わりに、この世界ではそれに劣らぬ魔法…という概念があり。その魔法の力を宿した魔石なんかを加工した物を使った電灯や、家電品みたいな物は存在するらしいから。今のところ生活面に関しては大丈夫…そう、かなぁ。 ゲームの世界がベースだからか、現代人でも意外と快適だと思うし。 まだ初日だから、なんとも言えないけど…。 「そうか…しかし、セツ殿はあまり動じていないのですね…」 今度は感心したよう、笑うルーファス。 笑顔は良いんだけど…なんかまだ固いよなぁ。 「セツでいーよ。オレの方が年下なんだし…」 「ああ…と、そう、だったな…」 口調が敬語に戻ってるのを指摘すれば、申し訳ないと律儀に頭を下げるルーファス。 知ってたけど、ほんといいヤツなんだよなぁ…コイツは。 「では、セツ…」 「ん、なに?」 改めて呼び捨てで呼ばれると、その良く通る声に紡がれた事が、無性に擽ったく感じて。 「その……平気、か…?」 自分の意思なくして、こんな異世界に飛ばされて。突然、神子だなどと呼ばれ、世界を救うだなんて… オレは偶然にもゲームのことを把握してたから、そこまでの動揺もなかったんだろうけど。 本来なら、簡単に受け入れられるような話じゃないだろうに。と、ルーファスは案じているみたいだが…。 それでもオレがここまで、平静でいられたのは。 多分、ここが初めて知る世界…ではなく、勝手知ったるゲームの世界とほぼ同じ光景だったから…だろう。 全て一緒…とまではいかなかったけども。 ルーファス達の事は、そりゃもうプロフィールまで詳しく知ってるからなぁ。 それだけでも、なんか他人な気がしなくてさ… 気持ち的にも救われたんだと思う。

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