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2階にあるオレの部屋から、中央階段を下り1階の食堂へ。そこでみんなと食事をするのが、なにやら決まり事になっていて。 オレが到着すると、既に皆勢揃いしており…。 すっかり寝坊してしまっていたんだと気付くオレは、ゴメンと頭を下げつつ急いで食卓へと滑り込んだ。 「慣れない場所で、色々と気苦労も耐えないだろうからね。」 気にしなくていいんだよ~と、アシュレイがウインクして一言。さりげなくそういう気配りが出来ちゃうなんて…まあ、コレが素なんだろうけどさ。 軽そうに見えて彼も、実は優しい人だと思う。 ロロやジーナも、アシュレイに賛成とばかりにフォローしてくれてるし。さっすがヲタク女子達がハマる、ゲームのキャラクターだけあってさ。 女心っていうの?…そういう気遣いとか、心得てるんだよなぁ。 まぁ、イレギュラーかなんなのか。 残念なことに神子は男のオレ、なんだけどね…。 朝食を取りながら、昨晩同様こちらの世界の事をざっくりだけど教わって。これからの事なんかについても話し合う。 「まずは女王陛下にお会いして頂き、その場で今後の処遇などをお話することに致しましょう。」 これって、RPGに良くある謁見てやつだよね? ゲームだと、お城の階段登ってけばすぐ王様に会えちゃったりするけど。 ここは二次元…であって。今はそうじゃないし、現実と何ら変わらないから。じゃあ謁見しよう!ってな感じで、すんなり陛下にご対面…とはいかないみたい。 とにかく謁見については女王様の都合がつき次第、みんなと一緒に会いに行く…ということになった。 「あ…この国は、女王様が治めてるんだっけか。」 それもゲームと同じだったから、知ってたけど。 一般的には珍しい方なんじゃないかな? 「我が国の王族は代々女性に対し、特殊な力や才が受け継がれる傾向にありまして。現女王もまだお若く、多少…個性的ではあったりもしますが…。国民からの支持は圧倒的に高いですね。」 なんだかヴィンセントの言い回しは、ちょっと気になるけど…。彼のようなお堅い人間が認めるくらいなんだから、それは凄い人なんだろう。 女王様って響きだけで、なんか萎縮しちゃうんだけど。大丈夫なのかな~?オレみたいなのが、謁見とかさ…。 「平気だよ~“アリシア様”は、とっても気さくな御方だからね!」 「そうそ。陛下も本音は堅苦しいのが、苦手だかんなぁ。公の場じゃなけりゃ、俺なんかとも普通に接してくれるんだぜ?」 ロロとジーナの話を聞き、多少安堵するオレ。 一般市民のオレなんかが王様とか、いきなり国のトップと対面だなんて、一生無かっただろうからなぁ…。 てか、ここへ来てまだ2日目だってのに。 あまりに話のスケールがデカすぎて…正直、実感が沸かないや。 なんだか考えるだけで、疲れちゃいそうだし…。 面倒くさい事は、極力避ける方で。 デートする場所なんかでも、彼女のアリサちゃんに任せっきりだったけれど…。 こうして冷静になってから、彼氏してた頃の自分を客観的に振り返ってみると。ホント甲斐性のない男だったんだなぁ…としみじみ思う。 フラれた時だって、頼りないってダメ出しされちゃったしなぁ…。 今はまだ、心の整理どころじゃないけど。 少しくらいは努力して、成長しなきゃなって。 アリサちゃんとの日々を省みながら、オレは密かに決意するのだった。 「セツ?」 「わわっ…!」 と…物思いに耽っていたら、ルーファスに顔を覗き込まれ。ドキリさせられるオレは、慌てて現実へと意識を引き戻す。 「…大丈夫か?」 「ん?あっ…うん、大丈夫だよ。」 そんなオレを、まだ心配そうに見つめるルーファスでだったけれど…。 オレがちゃんと笑って返せば、「そうか。」と一言告げ、ふわりと微笑んだ。

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