17 / 423

『神子殿が参られました。』 今朝の話から、暫くは待たされるのだろうと高を括っていた矢先───… その機会は、思いの外早々と訪れた。 夜───…少し遅い時間ではあったけれど。 女王様から急遽、謁見の申し出が届いたそうで。 オレとルーファス達、守護騎士の面々はヴィンセントの引率のもと、女王様がいるという宮殿へと訪れた。 遠目からの宮殿は壮大な異国の景色に映え、とても美しかったけれど。間近で見たら、まさに圧巻の一言で。それはもう謁見てものを、何処か甘くみていた自分を恨みたくなるほどだった。 だって圧がヤバいんだもん~…規模とか雰囲気とかさ。もうなにもかも桁違いだし…。 それでも、後戻り出来るわけじゃなく。 馬車に乗せられ、あれよあれよと宮殿の門を潜って───…と思ったら。 そこから敷地内を散々歩かされ、手続きでまた待たされて。謁見の間に辿り着いた頃には既に、体力的にも精神的にもヘトヘトになってしまっていた。 んでまさに今から、女王陛下とご対面になるわけだけど───… 「よくぞ参られました、神子セツ殿。」 「…ふぇ?────…ッぅうええええ!?」 女王陛下のおな~り~で、みんなを真似て深々頭を下げてたオレは。名を呼ばれ、恐る恐る頭を上げたのだけど… 女王様の顔を見た瞬間、そのあまりの衝撃的な光景に。現状も忘れ、思わず…絶叫してしまった。 「あらあら、(わたくし)の顔に何かございまして?」 場を(わきま)えぬほどの驚きように。女王に仕える近衛騎士達は、訝しげにオレを睨んだが…。 当の女王様は気にした様子もなく、きょとんとして首を傾げている。 相対するオレはというと、ただただ目の前のそれが信じられず。口をあんぐりと開けたまんま、立ち尽くすしかなかった。 「な、なんで───が…?」 相手がこの国の最高権力者にも関わらず。 その女王様に向け、指をさしながら狼狽えてしまい。 そんなオレの奇行を、女王様はただただ不思議そうに見つめている。 「アリサ…?少し似ておりますが、(わたくし)の名はアリシアと申しますのよ?」 惜しかったですわね~!と、意外にも軽い口調の女王様だけど。今のオレには警戒心剥き出しな騎士達の、冷ややかな視線すら気にする余裕も無いわけで…。 「アリ、シア…?アリサちゃんじゃない、の…?」 「ええ…───もしや…セツ殿の世界でのお知り合いの方と、間違われたのかしら?」 そうは言われても、目の前のきらびやかなドレスの女性は、元恋人だったアリサちゃんと瓜二つ…なわけで。未だ信じられないとばかりに、オレは女王様を凝視する。 そんなオレの、ふてぶてしい態度が気に障ったのだろう。とうとう護衛の騎士達は声を荒げ、オレを制した。 「例え神子殿と言えど、陛下の御前ですぞ…!!」 騎士が間に割って入り、手にした槍を構えると。 すかさずルーファスがオレを庇うよう腕を引き寄せ、その背中へと(かくま)う。 さすがに状況を察したオレは、ヒヤリと背筋を強張らせたけど…。 「およしなさい。神子殿はまだ“此方”の世界に来たばかりの身、何も把握しておられないのですよ?…それに、実に愉快な方ではありませんか。」 緊迫した雰囲気の中、女王様はカラカラと笑い飛ばし。怪訝そうにざわつく近衛騎士達を、一喝して下がらせた。

ともだちにシェアしよう!