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⑤
「けど、オレ魔法なんてっ…」
そもそもオレのいた世界じゃ、そんなミラクルなもの存在すらしないわけで…。困惑するオレは情けなく眉根を下げる。
するとアリシア様は、にこりと笑った。
「代々、この世界をお救い下さった神子達も皆、初めはそうだったと言い伝えられております。ですから、ご安心を。」
何も今すぐに、ラスボスを倒してこい───…なんて話じゃなく。当面は宮殿敷地内にある、あの屋敷で守護騎士達と共に生活し。神子の力が覚醒するまで、経過を見るのだという。
それにこの世界の事に関しては、赤子同然の知識しか無いわけだから。まずは理解し、学んで。最終的には魔法も自在に操れるよう、訓練すれば───…と。
要は、レベルアップしろって事だよね…うん。
「このような重責を、別世界の方に委ねるなどと…勝手な申し出であることは勿論、承知の上…ですが、どうか…」
我が国を魔族の脅威からお救い下さい、と。
女王は立場も省みず、自らオレへと頭を下げるのだった。
護衛の騎士達からは、どよめきが起こる。
オレはどう答えて良いか判らず、助けを求めルーファス達を振り返れば。みんなも女王様と同様、期待に満ちた眼差しでオレを見守っていた。
だから…
「えーと…オレが神子かどうかは、正直まだ自信ないですけど。そのっ…なんとか頑張ってみようとは、思います…」
優柔不断で決断力に欠けると、いつもアリサちゃんに注意されてたオレだが。場の雰囲気に流された所為もあり…早合点にも、ハイと応えてしまう。
しかし今更それを悔やんだところで、時既に遅し。
こうなってはもう、後戻りなんて出来るような状況でもなかったんだ。
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