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「…で、何を悩んでいるんだ?」 言って優しくオレの頭に手を乗せるルーファス。 さりげなく触れられ、ドキリと胸の奥が熱くなる。 昨日、オレにすぐ触るなとか注意してきたクセに… ホント無自覚イケメン様はズルイ。 「や、その…」 コイツに優しくされると、甘えたくなる自分がいる。多分ルーファスが、歳の割に落ち着いてるからだろうけどさ…。 それだけじゃない気がするのは、なんでだろ? オレが顔を赤らめ、もごもごと言い淀んでいると。先にルーファスの方から切り出された。 「すまないな…」 「え…?」 何が?と見上げれば、ルーファスは憂いを帯びた笑みを見せて。 「困惑…しているのだろう?」 本人の意思も無く連れて来られた世界で、いきなり神子の責任を背負わされて。 …ルーファスの目をじっと捉えれば、なんだか全てを見透かされてるような気分になる。 「オレ、はっ…」 「良いのだ。それでも私は、お前に“選んで良い”などと、軽々しくは言えないのだから…。」 だからすまない、と。まだ出会って間もないようなオレを、神子の名で縛り付けてしまうことに。 コイツは律儀にも、罪悪感を抱くんだ。 「別に、お前はっ…────」 「私もこの国の民…だから、同罪だ。」 擁護しようとするオレの口を、ルーファスはその指先で遮る。 「ルーファス…」 「私は神子を守護する為に、存在しているのだがな…」 己の不甲斐なさに葛藤するルーファス。 唇から、オレの頬へと滑るその指が…戸惑いを露に、微かに震えているのが判った。 「ずっと当たり前だと、思っていたんだ。神子は世界を救うものだ、と。しかし実際に、神子の使命を負わされるセツを目の当たりにしたら…。それが矛盾していたのだと、初めて気付かされたのだ…」 なんて独り善がりなのだろう、と。 自身の世界の安寧と、オレなんかとの両天秤に揺れる緑柱石の瞳。 その目に見つめられると、なんだか胸がいっぱいになり…じんと目頭が熱くなってしまった。 「ちがう、違うよ…ルーファス。」 「セツ…?」 静かに首を横へと振るオレに、ルーファスは眉を寄せる。 「お前はオレを守るって…誓ってくれただろ?」 だったら、オレが使命とやらを全うするその時まで。傍にいて、一緒に。 「救うんだ。オレと、世界をさ。」 この一瞬で、つっかえてたものが吹っ切れて。 笑顔で告げれば、目を見開いて固まってしまうルーファスだったけど…。 「ああ、そうだな…私の命、セツの為に捧げよう。」 お前が進む道を共に…我が一生を懸け、護る───だなんて。なんとも騎士らしい殺し文句で応えるルーファス。 ホント、敵わないよなぁ… 「なんだそれっ…まるでプロポーズみたいだなっ!」 「え?プロ…」 余りの気恥ずかしさに、からかうよう返せば。 真に受けたルーファスは、頬を赤く染めてしまい。 そうなると、オレにまで熱が移っちゃうわけで…。 夜も更けてきた、薄灯りの部屋で男ふたり。 暫くあたふたするという、妙な空気に苛まれることとなる。 なんか調子狂うんだ、オレ。ルーファスが相手だと、さ… なんだかんだと、オレの為に親身になってくれるルーファスに心打たれ…『神子』という使命に対する考えを改めたオレは。 迷いもありはすれど、着実に…それでも一歩ずつ。 それはたぶんきっと…良い方向へと、進み始めていたんだ。

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