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⑤
「んああああ~~っ…さすがに限っ界!!」
本を投げ出し、グシャグシャと髪を掻き毟るも。
気分は晴れることなく…オレは盛大な溜め息を漏らす。
「始めの頃より、集中力が落ちてきてますが?」
「だ、だってさ~…」
そんなオレを横目に、冷静な指摘を繰り出すヴィンセントを。じとりと恨めしげに見上げてはみるものの…彼には全く通用せず、無言の圧力で以て弾き返される。
うう、解ってるけどさ~!解ってるんだけど…
「はぁ…確かに、少々苛め過ぎましたかね。」
あ、今までのスパルタぶりは意図的だったのね…と心中でツッコむけれど。怖くて言えないオレは、ぶす~っと不貞腐れては、彼を睨み付けるのが精一杯。
まあコイツは普通にスルーしちゃうけどね!
こういうリアクションをルーファスにすると、結構効くんだけどなぁ~。
「もうムリムリ~!これ以上頭ん中、なんっにも入らな~い!!」
勉強に加え、魔法の力を得るための儀式だとか瞑想だとか…。ここ2週間ぐらい、ずっっっと屋敷と神殿だけを行ったり来たり。
ルーファス達が気を遣って、色々と息抜きさせてはくれるんだけど。
この短期間で、一気に膨大な知識を詰め込み過ぎちゃった所為か…。オレの記憶容量は、既に限界値を優に超えていた。
「なあなあ~、ヴィンセント~」
「却下ですね。」
「…いやいや、まだなんにも言ってないだろ~!」
今度はおねだりするよう、上目遣いでウルウル見つめてみても。コイツに色仕掛け?は全く効果が無いらしく。掌で軽くあしらわれてしまう。
しかーし!ここで怯むわけにはいかないのだ。
「せっかくこの世界に来たのにさ。オレってば、宮殿の敷地内しか行動出来ないだろ?」
そりゃあ敷地内と言えど、宮殿だけじゃなく貴族の居住区やら大神殿といった様々な施設もあって。野球ドーム何個分だってくらい、すんごく広いんだろうけどさ。
オレが外出できるのは、神殿とこの屋敷だけしかまだ許可されてなくって。それにも必ず守護騎士達が同伴、加えてのんびり出来るわけじゃなく、目的と言ったら勉強しかないんだから…
いくらなんでも、気分転換したいってなるよね?
「貴方の言い分は理解出来ますが…。だからと言って、神子である貴方を、おいそれと外出させる訳にはいかないのですよ。」
眼鏡をくいと上げ、溜め息を吐くヴィンセント。
納得出来ないオレは頬を膨らませて。
ここは負けじと必死に食い下がり、断固抗議した。
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