27 / 423
⑥
「何かあったのか?」
そこへルーファス達がいつものように、お茶と菓子を持って勉強部屋へとやって来て。
にらめっこするオレとヴィンセントを前に、どうしたんだと疑問符を浮かべる。
「…────それは…万が一ということもあるし、ヴィンの考えを否定することは出来ないな。」
ルーファスなら、きっとオレに味方してくれるんじゃないかって期待してたのに。
成り行きを説明すると…意外にもヴィンセントに同意を示した、守護騎士の皆さん。
なんなら喜んで一緒に出掛けてくれそうなジーナやロロまでもが、困ったように眉根を下げちゃうもんだから。
え…そんな治安悪いのか、この国?
お城は緩やかだけどちょっとした高台にあるから、城下町が一通り見渡せるんだけど。
すっごく華やかな街だし、絶えず人々が行き交ってるのが判ったから。遠目でも随分と活気があるように思えた。
何よりルーファス達や女王アリシア様、大司教トリント様なんかの人となりを見てるとさ。良い国だってイメージしか、沸かないんだけどなぁ…。
「とりあえず、お茶でもしながら話をしようか?」
気を利かせてくれたアシュレイが、立ったまんまのオレらをテラスへと誘い。ティータイムを交え、先程の件について話を進めた。
「神子というのは、この国にとっての救世主なのだけれど…」
同時に、欲への対象にもなるのだ…と。
アシュレイはいつになく真剣に語り始める。
「この世界には無い、特異な存在…未知なる者だからこそ。常識では計り知れない奇跡を起こす…とされてるからね。」
何者をも癒す魔法と、強大な魔族の力すら抑え込んでしまう結界術。それは神子の血のみが成せる、まさに神業とも言え…。
それ故に…無い物ねだりをする輩は。何処からでも涌いてくるのだ、と。
「けどさ…!そのためにルーファス達、守護騎士がオレを守ってくれるんだよね?」
「それは、そうなのだが…」
どう説明してよいのやら…煮え切らぬルーファスの態度に、オレの不満は募るばかり。
すると言い淀む彼に代わり、アシュレイが口を開いた。
「まあ落ち着いて、セツ。その質問をルーファスにするのは、酷というものだよ?」
意味が解らず、不信感を表すオレに。
アシュレイはさも楽しげに勿体振ってみせる。
ジーナもルーファス同様、目を泳がせ頭をポリポリしてるし。ロロは、なんだか恥ずかしそうに頬を染めていた。
ヴィンセントに関しては澄ました顔で、成り行きを見守る姿勢を表してるし…。
一体、何が言いたいんだろ…?
ともだちにシェアしよう!