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「なんだよ、それっ───…」 情けなく崩れ落ちるオレをルーファスが支える。 助けを求め見上げれば、なんとも言えない困り顔とかち合った。 ふとそこで、ルーファスも事実を知ってたんだと気付いてしまい…そうなったら、急に恥ずかしさが込み上げてきた。 「一説には、守護騎士以上の力を得るとか?根も葉もない噂だと、不老不死になれるだとか───…ピンからキリまで沢山あるからなぁ。」 「ボクたちだって、少なからず神子の血を受け継いでるから。こうして人並み以上に魔力が高いわけだしね…」 さっきまで恥じらっていた年少組は、既に開き直ったのか口々に語りだす。 ───てか、それが本当なら…あながちデタラメでもないんじゃないの? 「まあ、神子が女の子の場合の話…だからねぇ。前例がないから、想像でしかないけれど。それでも欲しいと思うなら、試す価値はあるんじゃない?」 私欲を肥やそうという輩なら尚更───…アシュレイはさらりと爆弾を投下する。 いやいや…マジで笑えないでしょ? 「神子って言っても、オレだよ?ロロみたく可愛くて女の子みたいなら、解らなくもないけどさ~…」 女々しいとは良く言われてたが、あからさまに女っぽい容姿でもない。どう見ても男なオレが、そんな野郎に襲われるとか…ないない、マジで無いだろ。 …と、無理矢理に笑い飛ばしてみたけれど。 なんでか、みんな目を丸くして。じ~っとこっちを見たかと思えば、互いに目を合わせ苦笑を浮かべるもんだから。 あれ?オレまたなんか妙なこと、言っちゃったかな…。 「セツ…それは少し浅はかな考えだと、私は思うが。」 「ルーの言うとおりだよ!ボクなんかより、セツの方がずっと可愛いんだから。充分警戒しなきゃ!」 「そうだぜ~、お前ポヤ~ッとしてて隙が多いし。悪い奴にすぐ騙されちまいそうで、危なっかしいかんなぁ。」 ルーファスとロロ、そしてジーナが声を揃えれば。ヴィンセントまでが、「こういった自覚の無い方ほど、タチが悪いですからね。」…とか独り言を漏らす始末。 アシュレイに至っては、どこか楽しそうで。 「男はね、みーんなケダモノなんだからね?」 気を付けて~だなんて、思えばオレが男に食われちゃう前提で話し進んじゃってるし。 …てかさ、どっちかと言うと女の人に襲われる可能性のが高いんじゃないのか? 本来なら、まずソッチを連想するもんだけどなぁ…。 「いやぁ、だからって無いだろ~…オレに欲情出来る男とか…」 そういえば昔アリサちゃんに、 『節くんは顔薄めだから、メイクして女装したらスッゴく似合いそうよね!』…なぁんて、本気で試されそうになったのを、丁重にお断りした…なんて事もあったけどさ。 「セツは甘いなぁ。例えば──…そう、ルーファスみたいな、如何にも誠実で紳士的な男であってもだ。いつ豹変するかは、判らないものなんだよ?」 「なッ──…アシュレイ殿!!」 いきなり名指しされ、まともに狼狽えるルーファス。 話題が話題なだけに。真面目なコイツには、あまり免疫が無いのだろうか…顔を真っ赤にしながら、アシュレイへと食って掛かる。 「私は決して、そのような下心など…」 「そうかい?君とて男なのだから。気になるコには触りたい…なぁんて欲求くらいは、あるんじゃない?」 否定するルーファスを、意地悪くあしらうアシュレイ。一瞬口ごもるルーファスは、ちらりとオレを見てきて…。 それからまた、すぐにアシュレイへと視線を戻すと。 毅然とした態度で以てはっきりと、こう言い放った。

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