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⑨
「私はっ…無理矢理に、気持ちや行為を押し付けたりなどしない!そういった事は、お互い合意のもとで行うべきだと思うし…」
興味本意や私利私欲のためだけに、性的な行為を強要するのは愚かなことだと。からかわれてるにも関わらず、真剣に答えてしまうルーファス。
やっぱり、コイツは根が純粋で真面目なんだなぁ…。
「そう?僕は興味あるけどなぁ。」
欲することは人としてごく自然なこと。
好意も性欲も、生存本能から来る産物なのだし。
それを否定するのは、生きることを否定するも同じじゃないか…と。アシュレイもアシュレイで、最もな持論を展開する。
「まあ…さすがに僕も男に興味を持ったことは、今まで無かったけど…」
そう言ってアシュレイは、含み笑いを浮かべる。と…
「そうだねぇ、セツとなら───…アリかもしれないねぇ。」
告げてパチリと、魅惑的なウインクを飛ばされて。
謎のご指名を受けたオレは、アシュレイの問題発言に衝撃を受けてしまい。デジャブかな…呆然と、開いた口が塞がらなくなる。
「アシュレイ殿…!!」
衝撃のカミングアウトを前に皆が絶句する中。
ひとり勢い良く立ち上がり、声を荒げるルーファス。
あまりの剣幕に、オレはびくんと肩を揺らし…ハッと我に返った。
「以前から気にはなっていたが…貴殿は守護騎士でありながら神子であるセツに対し、軽率な言動が過ぎるのではないか!」
「酷いなぁ。僕は本心を口にしたまでだよ?」
くすりと笑うアシュレイは、わざとらしくオレの肩を抱き寄せると。あろうことか────
「わわっ…!」
「アシュレイ殿…!!」
チュッと生々しい音を立て、オレのこめかみに口付けてきたもんだから。
焚き付けられてしまうルーファスは、まんまと憤慨し。オレの腕を強引に掴んだかと思うと…アシュレイの元から勢い良く身体を引き剥がした。
反動で、ドスンとルーファスの胸に収まるオレ。
「これ以上、セツをからかうのは止めろ…」
いつもの礼儀正しいルーファスとは一変し、荒々しい口調で警告する様に。アシュレイも少々やり過ぎたかなぁ~と、間延びした声で両手 を上げる。
「そんなに気になるなら、君も素直になればいいんじゃない?」
やっぱり仲が悪いのか、それともオレ…『神子』が絡んでる所為なのか。どんどん険悪になっていくふたりに、板挟み状態なオレ。
どうしたら、この場を丸く治められるのかが判らず。訴えるようルーファスの服を握り締めたら…
「あっ…ちょ、ル───」
いきなりその手を強く掴まれてしまい。
オレは何か反応する間も与えられぬまま、ルーファスに半ば引き摺られるようにして。庭園へと連れ出されるのだった。
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