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⑩
「ま、てっ…ルーファス、痛い…ってばっ…!」
グイグイと力強く腕を引かれ、庭園奥の林の中まで走らされる。
ルーファスは我を忘れているのか、握る手には更に力が込められて…。痛くてオレが悲鳴を上げたところで、ようやく立ち止まってくれた。
「私としたことが、取り乱して…すまない…」
緩められた腕を見やれば若干赤みがさしており。ルーファスは眉を潜め、申し訳なさそうにオレの手を労る。
「…いいよ別に。それより、ごめん…オレの所為で、変な空気にしちゃってさ…。」
まさかあんな話になるとは、思ってもみなくて。
ルーファスは人一倍真面目な性格だから。
ああいう下品な話題…いわゆる下ネタが、苦手だったのかもしれない。
「アシュレイとも、ケンカみたいになっちゃったし…」
軽い印象を与えてるけど、アシュレイは決して悪いヤツじゃないと思う。
最年長だし、さりげない気配りとか…基本的には紳士だし?みんなに稽古つけてる時とかは、頼れる先輩って感じで。良い雰囲気だったんだ。
けど…なんでかなぁ?
オレの前でだと態とらしくルーファスに意地悪したり、突っ掛かったりするから。
やっぱり何処か掴みどころがないっていうか。
謎が多いヤツだよなぁ…。
「やっぱオレの所為、だよな…。」
「違うんだセツ…すまない、お前は何も悪くはないのに…」
売り言葉に買い言葉で、熱くなり過ぎてしまったと。頭を下げるルーファスは、優しくオレの手を包み込む。
「いーよ、むしろ助かったし…。」
冗談なんだろうけど、アシュレイは男でもオレが相手なら抱いても良い───…みたいなことを言ったんだよね?
いきなりそんなコト言われたらさ…正直、反応に困るだろ?それに、あのままだと口喧嘩じゃ済まなくなりそうな雰囲気だったし…。
だから内心ほっとしたんだって、苦笑混じりに告げれば。ルーファスは、なんだか思い詰めたような表情を浮かべ…目を伏せてしまった。
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