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「セツは、どう…思ったのだ?」 アシュレイ殿の発言を。 問われて、質問の意図がイマイチ解らなかったけど。 「どうって…まあ、悪いヤツじゃないし。たまに意地悪っていうか、からかわれたりもするけど…。嫌いとかじゃないかなぁ。」 それでも、あのフランクすぎる性格は…否めないわけで。 「ただ…女の子ならまだ解るけど。男にも誰彼構わず、あんなヤラシーこと言えちゃうのは、さ…」 さすがに無いよなって…急に恥ずかしさが込み上げ、笑って誤魔化したのに。 オレの発言に対し、ルーファスは露骨に表情を曇らせてしまった。 「確かにアシュレイ殿は、以前から色恋に関する噂が耐えぬ方ではあったが…」 言い淀みながらも。 ルーファスはオレを見据え、ゆっくりと断言する。 「私が知る限り、彼が男相手に…あのような態度を見せるのは───…セツ、お前にだけだ。」 「えっ…そ、なの…?」 てっきり男もイケる口なんだと、思ってたのに。 んん?…てか、なんでオレだけなんだ? そうなれば、いよいよ理解に苦しくなるわけで… オレの頭はもう疑問符だらけ。 ルーファスに至っては、なんとも難しい顔を浮かべながら。戸惑うオレをじっと見つめるのだった。 「だから…アシュレイ殿には、充分気を付けて欲しい。」 「そんな、大袈裟な…」 手を握られたまま、真顔でオレを捉えてくる緑柱石の双眸に。堪らなく胸がざわついてしまうから…落ち着かない。 オレからすれば、コイツの方がヤバい。 だって、こんな風に見つめられたりしたらさ。 すぐ妙な気持ちに、なっちゃうんだもん…。 アシュレイみたく、あからさまじゃないけど無意識というかなんというか…。ルーファスってば、自分でも気付かない内に色気出してタラシこんじゃってさ。 もしかするとアシュレイに負けないくらい、沢山の女の子を…泣かせてきたんじゃないだろうか? 「ただでさえ、神子であるお前は…狙われ易い存在なのだから。」 「…けど、お前がいるじゃんか。」 そのための守護騎士だろって、ルーファスを見上げて。 「そんなに心配ならさ…お前がずっと、傍にいてくれれば良いじゃんか。」 「ッ…!セツ…」 自ら口火を切っておきながら、照れてしまい全身が熱くなる。 そこから追い討ちとばかりに、ルーファスからギュギュッと抱き締められちゃったもんだから…尚更だ。 上背があって、逞しいコイツの胸板にすっぽり収められてしまえば。恥ずかしさに心臓が破裂寸前、加えて抗えないこの状況。 オレの硝子のように脆い心は、無自覚なルーファスよる過剰なスキンシップにより…ますます追い込まれてしまうのだ。 「そうだな、私さえ気を抜かなければ…」 …かと思えば、勢い良く離れたルーファスから、ガシリと両肩を掴まれて。すぐ間近にある端正な顔に、再度心奪われる。が… 「お前のは、私が全力で守ってみせるから。」 「う、ん…?」 アレ…今コイツ、とか言わなかったか…? やっぱり天然なのか、ただ純粋なだけなのか… なんとも的外れな宣言?…ではあったけど。 それはそれで、ルーファスなりの誠意なのだろうと。都合良く解釈をして… 今はただ、聞き流すことにした。 「そうとなれば、セツとは常に行動を共に───…だが風呂やトイレはさすがに無理が…鍛練もあるしな…」 「ちょっとルーファス、お~い…って全然聞いてないや…」 頭を捻り、あーだこーだとひとり議論するルーファス。 比較的、常識人だと思ってたけど… やっぱりコイツも、かなりの個性派なのかもしれない。 そんなところも悪くない…だなんて。 妙なことを思い始めたオレは。 この時点で何かしらのフラグを… 手にしていたの、かも。 …といっても、既にオレは。ゲームの世界だとか、コレが夢なんじゃないかとか当初の不安なんてものは… にハマりすぎて、現実世界のことなんてもう…すっかり忘れてたんだけど、ね…。

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