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⑪
「セツは、どう…思ったのだ?」
アシュレイ殿の発言を。
問われて、質問の意図がイマイチ解らなかったけど。
「どうって…まあ、悪いヤツじゃないし。たまに意地悪っていうか、からかわれたりもするけど…。嫌いとかじゃないかなぁ。」
それでも、あのフランクすぎる性格は…否めないわけで。
「ただ…女の子ならまだ解るけど。男にも誰彼構わず、あんなヤラシーこと言えちゃうのは、さ…」
さすがに無いよなって…急に恥ずかしさが込み上げ、笑って誤魔化したのに。
オレの発言に対し、ルーファスは露骨に表情を曇らせてしまった。
「確かにアシュレイ殿は、以前から色恋に関する噂が耐えぬ方ではあったが…」
言い淀みながらも。
ルーファスはオレを見据え、ゆっくりと断言する。
「私が知る限り、彼が男相手に…あのような態度を見せるのは───…セツ、お前にだけだ。」
「えっ…そ、なの…?」
てっきり男もイケる口なんだと、思ってたのに。
んん?…てか、なんでオレだけなんだ?
そうなれば、いよいよ理解に苦しくなるわけで…
オレの頭はもう疑問符だらけ。
ルーファスに至っては、なんとも難しい顔を浮かべながら。戸惑うオレをじっと見つめるのだった。
「だから…アシュレイ殿には、充分気を付けて欲しい。」
「そんな、大袈裟な…」
手を握られたまま、真顔でオレを捉えてくる緑柱石の双眸に。堪らなく胸がざわついてしまうから…落ち着かない。
オレからすれば、コイツの方がヤバい。
だって、こんな風に見つめられたりしたらさ。
すぐ妙な気持ちに、なっちゃうんだもん…。
アシュレイみたく、あからさまじゃないけど無意識というかなんというか…。ルーファスってば、自分でも気付かない内に色気出してタラシこんじゃってさ。
もしかするとアシュレイに負けないくらい、沢山の女の子を…泣かせてきたんじゃないだろうか?
「ただでさえ、神子であるお前は…狙われ易い存在なのだから。」
「…けど、お前がいるじゃんか。」
そのための守護騎士だろって、ルーファスを見上げて。
「そんなに心配ならさ…お前がずっと、傍にいてくれれば良いじゃんか。」
「ッ…!セツ…」
自ら口火を切っておきながら、照れてしまい全身が熱くなる。
そこから追い討ちとばかりに、ルーファスからギュギュッと抱き締められちゃったもんだから…尚更だ。
上背があって、逞しいコイツの胸板にすっぽり収められてしまえば。恥ずかしさに心臓が破裂寸前、加えて抗えないこの状況。
オレの硝子のように脆い心は、無自覚なルーファスよる過剰なスキンシップにより…ますます追い込まれてしまうのだ。
「そうだな、私さえ気を抜かなければ…」
…かと思えば、勢い良く離れたルーファスから、ガシリと両肩を掴まれて。すぐ間近にある端正な顔に、再度心奪われる。が…
「お前の操は、私が全力で守ってみせるから。」
「う、ん…?」
アレ…今コイツ、操とか言わなかったか…?
やっぱり天然なのか、ただ純粋なだけなのか…
なんとも的外れな宣言?…ではあったけど。
それはそれで、ルーファスなりの誠意なのだろうと。都合良く解釈をして…
今はただ、聞き流すことにした。
「そうとなれば、セツとは常に行動を共に───…だが風呂やトイレはさすがに無理が…鍛練もあるしな…」
「ちょっとルーファス、お~い…って全然聞いてないや…」
頭を捻り、あーだこーだとひとり議論するルーファス。
比較的、常識人だと思ってたけど…
やっぱりコイツも、かなりの個性派なのかもしれない。
そんなところも悪くない…だなんて。
妙なことを思い始めたオレは。
この時点で何かしらのフラグを…
手にしていたの、かも。
…といっても、既にオレは。ゲームの世界だとか、コレが夢なんじゃないかとか当初の不安なんてものは…
こちら側にハマりすぎて、現実世界のことなんてもう…すっかり忘れてたんだけど、ね…。
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