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「おっ、お前だってアシュレイみたいにさ。色んなとこで、そういうナンパなこと言ったり…ベタベタ触ったりしてんじゃないのか?」 妙な不安に駆られたオレは、上目遣いでジロリと睨みを利かせ問い詰める。と… 「だっ、断じてそのようなことはっ…」 無い!ときっぱり答えるルーファスだけど。 本人には全く自覚が無いのだから、真偽のほどなど定かではない。 「なら、さっ…」 それが本当なら、さ。 ルーファスが言ったように、アシュレイと同じで。そういうコトを口にするのは… 「オレにだけ…ってこと?」 「ッ…!」 じーっと見上げれば、ゆでダコみたいな顔を隠すよう、口元を押さえるルーファス。 や、そんなあからさまな反応されちゃうとさ。 こっちまで恥ずかしくなるじゃんか… 「ふーん……そ、か…」 なんでだろ、嬉しい…なんて思ってしまうから。 無意識に、顔が緩む。 「その、お前は神子であり…幼少の頃よりずっと、憧れてきた存在だったからっ…」 言い訳に口走ったルーファスの台詞には、少しだけ切なくなるけど。 そうだよな…オレが神子じゃなかったら、そもそもコイツとも会えなかったわけだし。本来なら、女の子が召されるはず…だったんだから。 小さな頃から憧れてた『神子』という存在に。 ルーファスは恋心にも似たような感情を…抱いていたのかもしれない。 解ってはいるけど。なんか、複雑だ…。 機嫌良く見えたオレが、次にはしゅんとヘコみ出したのが判ったのか。ルーファスは、握る手にぎゅっと力を込めてくる。 オレも無意識に応え、もう片方の手をコイツの大きなそれに重ねてみたりなんかして。そしたら自然とじゃれるみたく、指と指とが絡められ… 擽ったくて、だけどなんでか苦しいような。 不可思議な感覚に苛まれた。 (ヤバいよな、コレ…) 頭の何処かで気付き始めてる感情を、知らないフリで遣り過ごそうとする。 ルーファスの行為も言葉も、オレにはどれもが甘過ぎて。もしかして特別なのかなって…勘違いしてしまいそうになるから。 けど、そんなことは絶対にあり得ないんだって… 無理やりに振り払っては、頭ん中で。 人知れず、無かったことにするんだ。 だって、さ───… (しんどいだろ、絶対…) モヤモヤする思考で、蘇る現実。 そうだ、オレは元々ここの人間じゃないんだし。 こんなバーチャルな世界が実在すること自体、可笑しな話じゃんか…。 そんな思ってもない事を考え、独り不安に駆られてると…。 絡めた指に、つい力を込めてしまったみたいで。気付いたルーファスが、宥めるよう柔く握り返してくる。 堪らず泣きそうになるのを堪え、見上げたら…。 ルーファスは黙ったまま、優しく微笑みかけてくれた。 「セツ…?」 心配そうに名を呼ぶルーファスの顔を見て、また胸が苦しくなるけれど。 「なんでもない、よ…」 そう心に蓋をして。 オレはふと浮かび上がった、数あるゲームのシナリオのひとつを… 無意識に記憶の奥底へと、仕舞い込んでいた。

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