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⑤
「おっ、お前だってアシュレイみたいにさ。色んなとこで、そういうナンパなこと言ったり…ベタベタ触ったりしてんじゃないのか?」
妙な不安に駆られたオレは、上目遣いでジロリと睨みを利かせ問い詰める。と…
「だっ、断じてそのようなことはっ…」
無い!ときっぱり答えるルーファスだけど。
本人には全く自覚が無いのだから、真偽のほどなど定かではない。
「なら、さっ…」
それが本当なら、さ。
ルーファスが言ったように、アシュレイと同じで。そういうコトを口にするのは…
「オレにだけ…ってこと?」
「ッ…!」
じーっと見上げれば、ゆでダコみたいな顔を隠すよう、口元を押さえるルーファス。
や、そんなあからさまな反応されちゃうとさ。
こっちまで恥ずかしくなるじゃんか…
「ふーん……そ、か…」
なんでだろ、嬉しい…なんて思ってしまうから。
無意識に、顔が緩む。
「その、お前は神子であり…幼少の頃よりずっと、憧れてきた存在だったからっ…」
言い訳に口走ったルーファスの台詞には、少しだけ切なくなるけど。
そうだよな…オレが神子じゃなかったら、そもそもコイツとも会えなかったわけだし。本来なら、女の子が召されるはず…だったんだから。
小さな頃から憧れてた『神子』という存在に。
ルーファスは恋心にも似たような感情を…抱いていたのかもしれない。
解ってはいるけど。なんか、複雑だ…。
機嫌良く見えたオレが、次にはしゅんとヘコみ出したのが判ったのか。ルーファスは、握る手にぎゅっと力を込めてくる。
オレも無意識に応え、もう片方の手をコイツの大きなそれに重ねてみたりなんかして。そしたら自然とじゃれるみたく、指と指とが絡められ…
擽ったくて、だけどなんでか苦しいような。
不可思議な感覚に苛まれた。
(ヤバいよな、コレ…)
頭の何処かで気付き始めてる感情を、知らないフリで遣り過ごそうとする。
ルーファスの行為も言葉も、オレにはどれもが甘過ぎて。もしかして特別なのかなって…勘違いしてしまいそうになるから。
けど、そんなことは絶対にあり得ないんだって…
無理やりに振り払っては、頭ん中で。
人知れず、無かったことにするんだ。
だって、さ───…
(しんどいだろ、絶対…)
モヤモヤする思考で、蘇る現実。
そうだ、オレは元々ここの人間じゃないんだし。
こんなバーチャルな世界が実在すること自体、可笑しな話じゃんか…。
そんな思ってもない事を考え、独り不安に駆られてると…。
絡めた指に、つい力を込めてしまったみたいで。気付いたルーファスが、宥めるよう柔く握り返してくる。
堪らず泣きそうになるのを堪え、見上げたら…。
ルーファスは黙ったまま、優しく微笑みかけてくれた。
「セツ…?」
心配そうに名を呼ぶルーファスの顔を見て、また胸が苦しくなるけれど。
「なんでもない、よ…」
そう心に蓋をして。
オレはふと浮かび上がった、数あるゲームのシナリオのひとつを…
無意識に記憶の奥底へと、仕舞い込んでいた。
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