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「カンッペキだね!」 「すっげ~…意外とバケるもんなんだなぁ──…」 あれから年少組に笑顔で拘束されたまま、有無を言わさず屋敷の中へと連行されたかと思えば…。 お勤め中のメイドさん達を数名ひっ捕まえ、ふたりが彼女らにコソコソ耳打ちし始めて。 メイドさんはニコニコしながら『かしこまりました!』…と声を揃えて、なにやらを快諾。 そんな彼女らの助力(?)を得て。 オレは、踏み込んではいけない領域へと…(いざな)われるのであった。 『セツ様…とってもお似合いですわ!!』 メイドさん達から口々に称賛されても、オレとしては複雑極まりないわけで。…てか、主に下半身が…ピラピラして心許ないというか、落ち着かない。 みんなには穴開きそうなぐらい、めちゃくちゃ見られてるし…。 「オレもう男として、完全に自信無くなったわ…」 「あらあらそんな~勿体ないですわ、セツ様!」 …ここのメイドさんて、なんだかノリが女王様と似てる気がするんだけど、気のせいかな? みんな揃ってオレの哀れな様を見ては、キャッキャッと黄色い声を上げて。素敵だの可愛いだのを連呼してくるんだが…。 女の子達からの、絶大なる賛辞だというのに。 全くもって喜ばしくないのだから……泣きたい。 「大丈夫だよセツ!お世辞とかじゃなくて、ホンット~に可愛いんだから!」 「そうだそうだ。コレならルーやアシュだって、更に惚れること間違いなしだぜ?」 何故そこで、ルーファス達を惚れさす話になっちゃうんだか…。 まあ、これがあのゲームと同じ仕組みならばだ。 神子が守護騎士と恋をし、結ばれる───というのも、選択肢としてアリな展開なんだろうけど。 …てか、こんなシナリオ展開そもそも存在してなかったし! ゲームと同じだと思ったのなんて、それこそ登場人物とか、冒頭の一部分のみ。後はもう、比べる余裕もないくらい…予想外な展開ばっかだったんだから。 こんな風にね…。 「なあなあ、せっかくだしルー達にも見せてやろうぜ?」 「賛成~ボク、みんなを呼びに行ってくるよ!」 オレが独りこの瞬間に何か大事なモノを失い、傷心しきってる隙に。ふたりがとんでもないことを言い始めて…。 目敏く気が付いたオレは、あたふたと拒否反応を示す。 「やっ…やだよ!そんなの、絶対ムリ~!!」 特にルーファスには、こんな情けない姿を晒すわけにはいかない。 だってだって…!今のオレは聞いて驚くなかれ。 ナチュラルなものではあれど、一応顔にはひと通りの化粧が施されており。 加えて可愛い服…ということで。急だったこともあり、メイドさん達が着る制服…所謂メイド服なんぞを着せられてるもんだからさっ…! しかもだ。ここのメイドさんは、キッチリ清楚な黒タイツ着用なのにも関わらず。 オレにだけは、どっから持って来たのか激レアアイテムなニーハイソックスを履かさせるという拷問ぶりで。 …てか、オレのメイド服だけ明らかに丈が短い気がするんだけど。 そのおかげで、本来萌えポイントなハズの絶対領域が。自分のモンだと思うと、イタイとしか言い様がないわけでして… オレなんかに女装させるとか、ホント何考えてんだこの人達? ほんとヤバいってば…こんな格好に見られたらオレ、今度こそ羞恥心で瞬殺される自信あるわ…。

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