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ep.6 ほろにが初デート①

      「ヒドイじゃんかっ、ヴィンセント!」 「なんです、いきなり…騒々しい方ですね。」 いつも静かに開けろと言われてる、書斎のドアをバンッ!!と盛大に開いて。 入るなり開口一番、怒鳴り散らすオレを。相変わらずの冷静さであしらうヴィンセント。 しかし…今日ばかりは負けてなるものかと。 オレは口をムムムッと尖らせ、睨み返す。 「落ち着くんだ、セツ…」 後ろからオレを追っかけてきた、ルーファスも加わって…。あくまで平然と構えるヴィンセントを指差し、オレは(わめ)くよう抗議を始めた。 「さっきアリシア様に会ったら、普通に外出許可出してくれてたって言うじゃんか…!なんで黙ってたんだよ~!」 そう。つい先程まで、オレは女王様からのお茶会にお呼ばれされてて。ルーファス達と一緒に宮殿まで行ってたんだけど…。 それとな~く、城下町にも行きたいなアピールしてたら。随分前から許可してたって…ヴィンセントには伝えてたって言うからさ~。 まったく、ひっどい話だろ? 「さて、どうでしたかね?」 記憶にございませんが?…などと、シラを切るヴィンセント。 口では一度も勝ったことないけど。 オレだって今回ばかりは、一歩も引く気ないんだからな! 「なんで黙ってたんだよ…?」 やっぱり理由があるんだろうが…。 オレが勉強漬けの毎日に、ウンザリしてんのなんてさ。教育係のお前が、一番見て解ってたはずなのに。 そう訝しげに見上げ、問い詰めれば。 ヴィンセントは一応考えるような素振りをしはするものの…まともに答える様子は微塵もなくて。 すると見かねたルーファスが嘆息し、代わりに口を開いた。 「セツ、ヴィンはきっと…お前の身を案じて、直ぐには言わなかったのだろう。」 アシュレイとは、良く衝突するルーファスだけれど。ヴィンセントとは年齢も近く、所属してた部隊が一緒だったこともあったからか…意外と仲が良かったりする。 まあ…守護騎士の中だと真面目で常識人なのは、ルーファスくらいのものだし?ヴィンセントと唯一まともに話せるってのも、あるのかもだけどね…。

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