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③
「勿論、セツひとりで行かせるわけではありませんよ?外出の際は、必ず守護騎士を同行させるのが絶対条件ですからね。」
万歳三唱で歓喜するオレを、ヴィンセントが浮かれ過ぎですよと、ぴしゃり窘 める。
「そうですねぇ───…城下へ行きたいと言うのであれば、ルーファスを必ず同行させて下さい。万が一、彼が行かないのであれば…」
外出は認めないと告げられて。
オレは思わずルーファスを仰ぎ見る。
じーっと訴えかけるよう見上げれば…
ルーファスはあからさま目を泳がせ、たじろいだ。
「さあさあ、私は忙しいので。用が済みましたなら、出ていって下さい。」
話もそこそこに、オレとルーファスは書斎を追い出されて。廊下の真ん中、互いに顔を見合わせる。
「る~う~?」
「ッ!…わ、私は…お前の身を案じてだなっ…」
まあだそんなこと言ってら…
ほんとルーファスってば、過保護過ぎるよね?
それは人一倍、守護騎士としての責任感が強いから…。オレのことを親身に思ってのこと、なんだろうけど。
「……………」
「そっ…そのような目をされても、私は惑わされぬからなっ…」
ちょいちょいとルーファスの服の端を引いて、態と子どもっぽくウルウルとおねだりしてやれば。
ルーファスは判りやすいくらい動揺しちゃって。
真っ赤な顔しながら、それでも抵抗しようとするけど…。
「……………ダメ?」
「ッ……!!」
外の世界を知らないから、正直不安もある。
みんなには散々脅されたんだしさ。
治安だって、フェレスティナが比較的平和な国と云えど…そこはファンタジーの世界。オレの住んでた世界に比べたら、危険の程度なんて比べものにもならないのだろうからね。
それでもさ、オレが本物の神子だって言うのなら。ちゃんと自分の目で見極めて。心の底から、守りたいと思える世界じゃなきゃ…ダメだと思うんだ。
上辺だけじゃなく、この目でちゃんと確かめたいって…だから。
「オレさ…もっともっと知りたいんだ。ルーファス達やこの世界のこと。歴史とかは、散々勉強させられてるけど…。お前が何処で生まれて、どんな風に育ったかなんて…。話聞いただけじゃあ、想像もつかないだろ?」
だから教えてよって、真顔でルーファスにお願いすれば。コイツは根負けしたように目を細め、苦笑った。
「解った…もう止めはしない。だが、決して私の傍を離れぬよう、充分注意するのだぞ?」
「うん…!ありがとうっ、ルー!!」
嬉しさのあまり、勢いでルーファスに抱き付けば、大袈裟なくらいビックリされて。恥ずかしかったのか、すぐにべりっと引き剥がされてしまう。
「だからっ、そういった行為は軽々しくするなと…」
「え~なんでだよ?いいじゃんか~別に。」
だってルーファスと一緒に城下に行けるのが、楽しみなんだもん!って返したら。
ルーファスは、「困ったものだ…」とかなんとか、頭抱えてぶつぶつ言い始めちゃった。
けど本当に嬉しい。城下町に行けるってのもあるけど。やっぱりルーファスと一緒…だからかな?
なんか、想像しただけですっごくワクワクしてきた。
なのに…
「私だけでは心許ないな…念のためジーナ達と、警護の者も増員して…」
…とか、お堅い騎士様がつまんないコト言い出しちゃったもんだから。どんだけ心配性なんだよ!…って、オレは不満げに唇を尖らせる羽目になるのだが。
「え?ルーファスと、ふたりだけで行くんじゃないのか…?」
てっきりそうだと思ってたのに。
まあロロやジーナ、アシュレイが来るのは守護騎士だから、まだ解るけど…。
さすがにゾロゾロと、兵隊さんまで引き連れてったら…逆に悪目立ちするんじゃないかな?
「私も出来ればそうした───…いや、セツに何かあっては大変だろう?」
用心にこしたことはないと、真剣な顔で説得されたら従うしかなく。
とはいえ、せっかく上がったテンションが、一気に下がっちまったじゃんか~…
「そう落ち込むな、セツ。少々制約はあるが…ようやく許された自由だろう?」
「まあ、そだね……」
なら楽しまなきゃ損だよな…そう気を取り直して。
オレは早速、ルーファスと一緒に城下へと出かけるための準備を始めた。
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