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「勿論、セツひとりで行かせるわけではありませんよ?外出の際は、必ず守護騎士を同行させるのが絶対条件ですからね。」 万歳三唱で歓喜するオレを、ヴィンセントが浮かれ過ぎですよと、ぴしゃり(たしな)める。 「そうですねぇ───…城下へ行きたいと言うのであれば、ルーファスを必ず同行させて下さい。万が一、彼が行かないのであれば…」 外出は認めないと告げられて。 オレは思わずルーファスを仰ぎ見る。 じーっと訴えかけるよう見上げれば… ルーファスはあからさま目を泳がせ、たじろいだ。 「さあさあ、私は忙しいので。用が済みましたなら、出ていって下さい。」 話もそこそこに、オレとルーファスは書斎を追い出されて。廊下の真ん中、互いに顔を見合わせる。 「る~う~?」 「ッ!…わ、私は…お前の身を案じてだなっ…」 まあだそんなこと言ってら… ほんとルーファスってば、過保護過ぎるよね? それは人一倍、守護騎士としての責任感が強いから…。オレのことを親身に思ってのこと、なんだろうけど。 「……………」 「そっ…そのような目をされても、私は惑わされぬからなっ…」 ちょいちょいとルーファスの服の端を引いて、態と子どもっぽくウルウルとおねだりしてやれば。 ルーファスは判りやすいくらい動揺しちゃって。 真っ赤な顔しながら、それでも抵抗しようとするけど…。 「……………ダメ?」 「ッ……!!」 外の世界を知らないから、正直不安もある。 みんなには散々脅されたんだしさ。 治安だって、フェレスティナが比較的平和な国と云えど…そこはファンタジーの世界。オレの住んでた世界に比べたら、危険の程度なんて比べものにもならないのだろうからね。 それでもさ、オレが本物の神子だって言うのなら。ちゃんと自分の目で見極めて。心の底から、守りたいと思える世界じゃなきゃ…ダメだと思うんだ。 上辺だけじゃなく、この目でちゃんと確かめたいって…だから。 「オレさ…もっともっと知りたいんだ。ルーファス達やこの世界のこと。歴史とかは、散々勉強させられてるけど…。お前が何処で生まれて、どんな風に育ったかなんて…。話聞いただけじゃあ、想像もつかないだろ?」 だから教えてよって、真顔でルーファスにお願いすれば。コイツは根負けしたように目を細め、苦笑った。 「解った…もう止めはしない。だが、決して私の傍を離れぬよう、充分注意するのだぞ?」 「うん…!ありがとうっ、ルー!!」 嬉しさのあまり、勢いでルーファスに抱き付けば、大袈裟なくらいビックリされて。恥ずかしかったのか、すぐにべりっと引き剥がされてしまう。 「だからっ、そういった行為は軽々しくするなと…」 「え~なんでだよ?いいじゃんか~別に。」 だってルーファスと一緒に城下に行けるのが、楽しみなんだもん!って返したら。 ルーファスは、「困ったものだ…」とかなんとか、頭抱えてぶつぶつ言い始めちゃった。 けど本当に嬉しい。城下町に行けるってのもあるけど。やっぱりルーファスと一緒…だからかな? なんか、想像しただけですっごくワクワクしてきた。 なのに… 「私だけでは心許ないな…念のためジーナ達と、警護の者も増員して…」 …とか、お堅い騎士様がつまんないコト言い出しちゃったもんだから。どんだけ心配性なんだよ!…って、オレは不満げに唇を尖らせる羽目になるのだが。 「え?ルーファスと、ふたりだけで行くんじゃないのか…?」 てっきりそうだと思ってたのに。 まあロロやジーナ、アシュレイが来るのは守護騎士だから、まだ解るけど…。 さすがにゾロゾロと、兵隊さんまで引き連れてったら…逆に悪目立ちするんじゃないかな? 「私も出来ればそうした───…いや、セツに何かあっては大変だろう?」 用心にこしたことはないと、真剣な顔で説得されたら従うしかなく。 とはいえ、せっかく上がったテンションが、一気に下がっちまったじゃんか~… 「そう落ち込むな、セツ。少々制約はあるが…ようやく許された自由だろう?」 「まあ、そだね……」 なら楽しまなきゃ損だよな…そう気を取り直して。 オレは早速、ルーファスと一緒に城下へと出かけるための準備を始めた。

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