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⑤
「すっごい活気だなぁ~。」
宮殿の敷地から一歩踏み出し、初めて目にする光景は。どちらかといえば、身近で馴染み深い雰囲気に思える。
だって神殿の人達や屋敷の警備を担う騎士さん、執事やメイドさんなんかは『神子様セツ様』と、オレを敬うからさ…。
立場上、仕方ないとは思うけど。
気軽に名前で呼んで普通に喋ってくれるのなんて、
それこそルーファス達ぐらいなもんだろ?
だからこういう一般人な雰囲気の方が、オレにとっては日常的でさ。堅っ苦しくなくて気が楽なんだよね~。
勿論、建物の多くは凡そファンタジーの洋風なデザインだったから。懐かしい日本文化を思わせる風景は、まず見当たらないんだけども…。
「やっぱ良いなぁ~、こういうの!」
オレにとってはこれが、分相応なわけで。
簡易テントの露店とか、ちょっとしたお祭り気分を味わえる。
売ってるものは、どれも見たこともないような物ばかりだけど。甘い匂いに香ばしい焼き物の匂いが漂ってきて、どれもこれもスッゴク美味しそうだった。
店頭に並べられた装飾品に至っては、デザイン的にゲームの装備アイテムを連想しちゃうけど。
露店の品とは思えないくらい細工とか、すっごく凝ってて…。なんだか魔力でも込められてそうな、摩訶不思議な雰囲気をそれぞれ醸し出していた。
「なあなあ~、アレなに?」
「ん?…ああ、あれは砂糖と小麦粉などを練って、揚げたお菓子だな。」
フムフムなるほど…見た目は串に刺さった団子みたいだけど。味はドーナツに近そうだなぁ~。
あ、あっちのぐるぐる回しながら焼いてる肉みたいなのも、肉汁が滴ってめちゃくちゃ美味そうだ。
右に左、人目も気にせず田舎モン丸出しで大忙しなオレ。なんか見た感じ、夢の国のテーマパークみたいだろ?
そういうノリが久しぶりなのもあってか、オレは童心を思い出したかのように。年甲斐もなく、ついついはしゃぎまくってしまった。
「いっぱいありすぎて、何するか迷っちゃうなぁ~…って…────ああ!!」
つられてお腹もグーグー言い出したし、何か食べてみようかなぁ~…なんて思ってたけど。
そこでふと重要な事を思い出したオレは、唐突に大声を上げる。
「るう~…」
「どうしたセツ?急に泣きそうな顔をして…」
さっきまでキャッキャッ騒いでたオレが、一気に沈んじゃったもんだから。ルーファスが不思議そうな顔をして、こちらを覗き込んでくるのだが…。
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