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⑥
「せっかく遊びに来たのに…オレ、お金持ってない…」
外に出たい気持ちばかりが先行して、そこで何をするかという目的まで考えてなかったから。
うう、こんなの生殺しだ…
目の前には魅惑的な物が、沢山あるっていうのに。
これじゃ、何にも楽しめないじゃんか~チキショー!
ショックで項垂れるオレを見かねて、ルーファスがヨシヨシと頭を撫でてくれる。
縋るよう、目だけでじーっと見上げたら…。
ルーファスは大丈夫だと告げ、くしゃりと笑ってみせた。
「心配しなくてもいい、セツ。」
欲しいものがあるなら、何でも言ってくれて構わないからと。ルーファスはなんとも頼もしい台詞を言ってくれる。
「え、でもさっ…」
もしかしてルーファスの奢り?…って、反射的に喜んじゃったけどさ。それだとまた、甘えちゃうことになるから悪いよなって。
さすがに口ごもってしまうのだけれど…
「良いんだ。私がセツを喜ばせたいだけなのだから。」
お前が笑ってくれるならば、と。
初デートで彼女に言ったら、間違いなく惚れ直しちゃうであろうキザな台詞を。ルーファスは抵抗もなく且つ、スマートに言ってのけ…極上の微笑みを、その甘いマスクへと湛えてくださるから。
さっすが天然タラシ、やってくれますわ…
「ホントにいい、のか…?」
「勿論。遠慮など要らないからな?」
うう…名家の騎士様は器量だけでなく、懐も厚いんだなぁ。
でも、うん。そうだよな。
意地張ったとこでオレは所詮、無一文なわけだし…。この際は、仕方ないよね?
「じゃあ、甘えちゃおうかな…。」
「ん、では行こうか。」
うんっと元気よく返事して、オレは早速とばかりにルーファスの腕を引く。
「オレ、さっきのヤツ食べてみたい!」
「はは…分かったから、そう慌てるな。」
なぁんかホントにデートしてるみたいだな───…とか内心思いながら。本音は…そっちで浮かれてるのを誤魔化すため、わざと子どもみたいにはしゃいでみせて。
オレはルーファスの腕を掴んだまま、賑わう町中へと繰り出すのだ。
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