51 / 423
⑦
「はぁ~…さすがに疲れた~。」
「ずっと歩き通しだったからな。」
広場の噴水にあるベンチに腰を落ち着け、一休みする。
あれから色々な店を忙しなく巡り、路上で披露してた大道芸なんかを眺めたりして。
束の間の自由ではありながらも、念願叶ったオレは…それを大いに満喫しまくっていた。
「他に見たいものや、欲しい物はあるか?」
「やや…もう充分奢ってもらったから、いーよ!」
ここまで散々お金出してもらったし…やっぱ悪いじゃんか。
ルーファスは優しいから。
オレが手に取った物とか、少しでも気に入った素振りを見せると。それこそ全部買ってくれそうな勢いだったもんだからさ…。
これが恋人同士…とかなら、解らなくもないけど。
さすがに男のオレが、ルーファスから指輪だのアクセサリーだのプレゼントしてもらうってのは。ちょっとヘンなんじゃないかなぁってね…。
(恋人、か…)
そこでふと、ひとつの疑問にぶち当たる。
ここへ来てからひと月近く…オレとルーファスは、
あの屋敷でみんなとずっと一緒に生活してるのだけれど。
コイツにだって当然、今まで暮らしてた家があるわけで。それまでの生活とか、交友関係だとか…きっと沢山あったんだろうなって、しみじみ思う。
(いたりすんのかな、やっぱ…)
急に何故だかソレが、無性に気になって。
すぐ隣りに座る、ルーファスの横顔を盗み見る。
こんだけ男前で、性格も良ければ。
女の子達から、それはそれは持て囃されされ…人気を博してきたんだろうなぁと。
実際、宮殿や神殿に行く道すがら出会う、ご令嬢方や女官達。屋敷のメイドさんからも、よくチヤホヤされてたしね…。
まあ、ルーファスがアシュレイみたく女遊びしてるとこなんて、全く想像つかないけども。
実家はちょー有名な家柄のお坊ちゃんらしいし?
それなら、親が決めた許嫁とか…いても可笑しくないんじゃないかな…。
「どうした、セツ?」
「えっ……あ、ううん…!」
盗み見てたのがバレてしまい、慌てて頭 を振るオレ。
てかさ…ルーファスに恋人がいようがいまいが。
男のオレには、全然関係無いじゃん────…
ないんだけど…さ。
なのになんで、コイツのこと考えるだけで。
こんなに胸が、ぎゅぎゅうって…苦しくなっちゃうんだろう…?
ともだちにシェアしよう!