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⑪
(やッ…ルー、ファス…)
ごめん…あれだけお前が、オレの身を案じて忠告してくれてたのに。平和ボケしちゃってるオレは、ちっとも解って無かった…。
こうなるかもしれないって予感してたから。
お前やヴィンセントが、最後まで反対してくれてたんだって…なのに。
(ルー…ルーファス…)
助けて…イヤだよ、オレ…
お前以外のヤツにこんなコトされんの。
もう、絶対に我が儘なんか言わないし。
約束も破ったりしないからさ。
(ルーファス…!)
目の前の苦痛から逃れたいと願えば願うほどに。
頭に浮かぶのは、唯ひとりルーファスだけで。
ひたすらに彼を想い…心の中で名を叫ぶ。
会いたいよ、今すぐに。
こんな欲まみれな奴等じゃなくて、オレは…お前にだけに触れてもらえたらいいのにって。
一心に、彼のことだけを。想い描いたなら───
「おい、コイツなんだか様子が────」
それはひとたび力を得て。
奇跡をも、呼び覚ますんだ。
「あ…」
突如オレの全身から、淡い光が放たれて。
その不可思議な光景に、目を奪われた男達は。
一瞬だけ尻込みし、オレを掴む手を引っ込めたのだが…
「やっぱり、間違いねぇようだな…」
コイツが正真正銘の“神子”である…と。
奇跡の断片を垣間見た男達は、ニヤリとほくそ笑み。より強い欲を、剥き出しにする。
「ひッ…」
奇跡と言えど、何かが起こるでもなく。
もたらされた変化は、ただ身体が発光するのみのようで…。
男達に多少の迷いはあるものの。
大した抑止には繋がらず、オレは再び窮地へと立たされた。
(くそッ…)
元恋人に言われ続けた事が、今更になって思い知らされる。
この世界に来て、どんなに決意を固めても。
オレという人間の本質は、とことん中途半端でしかないのだと。
やっぱ、ダメだな。こんなんじゃオレ、
アイツにだって認めてもらえるわけないじゃんか…
(ルーファス…)
ああ、オレ…解った気がする。
いや違うな…
ほんとは知ってたんだ、最初から。
(ルー…ファス…)
あり得ないと思い込んでた。
この世界自体、充分あり得ない話だけどさ。
(ルー…)
神子だって言われて。
お前のためになら、頑張ってみようかなって思えた。
けど、それじゃあ神子としてでしか、自分の価値を見出だせないような気がして…
不安もすっごくあったんだ。
だからお前やみんなが、オレを神子としてだけじゃなくて。ひとりの人間として接してくれたことがさ。
すごく救われたし、嬉しかったから。
(会いたい、よ…)
こんな形で気付くなんて、ホント最悪だよ…
でもさ、
「…ッ…!」
もう、誤魔化せそうにないや。
だってオレはこんなにも、
「セツ─────…!!」
お前のことが、愛おしくて仕方ないのだから。
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