59 / 423
ep.7 目覚ましナイトとプリンセス?①
『セツ…』
泣いてると、お前は必ず傍にいて。
オレをその腕で、優しく包み込んでくれる。
名を紡ぐ声は心地よく耳に響いて…
嫌なことも辛いことも、全部忘れさせてくれるんだ。
真面目で誠実、かといってお堅いのかと思えば…
意外と柔軟で、時に少年のように悪戯で。
オレをリードする姿は、そつなく紳士的で格好いいのに。変なとこで行動力はあるっていうか…スキンシップも何気に多かったり?
触れられる度、すごくドキドキしちゃうけど。
お前が与えてくれる熱は、むしろ嫌じゃないから。
離れてく度に、もう少しだけ…なんて。
ホントはずっと思ってたんだ。
(ん…)
あったかい…なんてリアルな夢なんだろう。
まるでホントにアイツに触れられてるみたいで。
オレは迷わず、その熱へと引き寄せられる。
さっきまでは、とても不安で。嫌な夢を見てた気がするのに…。
夢の中でさえもお前は、オレを守ってくれるんだなって。それだけで、すごく穏やかな気持ちになれるから。
(すき、だ…)
例え此処 がゲームの世界でも何でも。
オレが男で、アイツも男だなんて現実も全部。
そんなものが、どうでもいいやって思えるくらい…
オレはアイツを好きになっていく。
始めはあり得ない事だと無意識に思い込んでたから。きっと勘違いなんだって、どっかで否定してたんだろうけど…。
認めてしまえば、なんてことない。
『恋』とはまさにそういうものなのだと。
だって自覚しちゃったら…
こんな簡単に受け入れらてしまえるんだから。
(オレって、こんなだったっけか…)
元彼女にさえ、ここまで想いを募らせたことはなかったかもしれない。
アリサちゃんのことは、初めての恋人だったし…
本当にちゃんと大好きだったけど。
今までのオレは、何をするにも半端者で。
夢中になれるようなことも、あまり無かったから。
いざとなれば、人はこんなにも変われるものなんだなって。正直自分でもビックリしていた。
それもこれも全部アイツに…
ルーファスに、出会えたからこそ。
恥ずかしながらきっかけは、アリサちゃんにフラれたのが発端で。半ばヤケクソであのゲームをプレイしたからなんだけど…。
よくよく考えたら、あの瞬間から。
オレは“ルーファス様”に、ハマってたんじゃないだろうか?
それでも、今のこの気持ちとは全く違う。
今ははっきりと、恋心を自覚してるのだし…。
この気持ちは絶対に、アイツには言えないけどさ。
ルーファスは、小さな頃から神子を崇拝していて…
世界を救う『聖女』という存在に、憧れてたんだと思うし。
きっと守護騎士になることだけを夢に、今まで生きてきたんだろうから。
だからアイツの、オレに対する優しさは。
きっと“神子”っていうレッテルありきのモノ、なんだろうな…。
ともだちにシェアしよう!