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「そ、そうじゃなくてさっ…」 本音をゴクンと飲み込み、嫌じゃないよと弁解すれば。途端にぱあっと機嫌を良くするルーファス。 なんなのこの人?ホントは全部解っててやってんじゃないの、もう… 「人の気も知らないで…」 「ん?」 なんでもないよ!と誤魔化すオレ。 これも惚れた弱みというヤツなのか…ルーファスの行動に、いちいち感情的になってしまうから厄介だ。 コイツの性格は、出会った頃から理解してたハズなんだが…。 振り回される度に一喜一憂してしまうそれが、まるで恋する乙女みたいで。初めての感覚に惑わされるオレは、どうしても冷静ではいられないのである。 ほんと、調子狂うよなぁ…。 「怪我の具合は…どうだ?」 ベッドに腰を下ろしてるルーファスの隣に落ち着けば、上から顔を覗き込まれて。 「…思ったより、平気だよ。」 昨日の事に対し、かなり責任を感じでいるルーファスは。申し訳なさそうにオレを見ては、悲痛な表情を浮かべてしまう。 問われて自分でも、身体をざっと確認してはみたけれど。 あんな酷い目に()った割には、意外と怪我も大したことはなかったみたいで。 節々はまだ少し痛むものの…不思議なことに擦り傷とか軽いものなんかは、既に治りかけていた。 「そうか…ならば安心した。」 目を細め安堵するルーファスは、まだ傷の残る頬へと、手を添えてきて。 労るよう、ふんわりとだけ触れてくる。 昨夜は屋敷に戻るなり、揃ってヴィンセントに説教食らったからなぁ…。 自分が守ると言った手前もあったから、ルーファスってばメチャクチャ落ち込んでたっけ。 「まだ気にしてんの…?」 「お前を危険に晒したのは…私の責任だ。」 違う、あれはオレが自ら招いた事なんだからって。いくら言ってもコイツは、頑として譲らず。一時は『守護騎士を()する』…とまで、口走ってたっけ。 そこはヴィンセントとオレで、必死に説得して。 それでもルーファスは、頑なに受け入れようとはしなかったけれど…。 最終的にはオレが『お前が辞めるなら、オレも神子を辞める!』…なんて感じで押しの一手。コイツも渋々とはいえ、その場はなんとか納得してくれたから良かったが… 今更ルーファス以外の守護騎士だなんて、考えられないもんな…。

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