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「わ、笑うなよっ~!」 「だってよ、セツが女王様にフラれちまったって…ぶははははッ!」 全て洗いざらい────…とは言っても、女王様と瓜二つなアリサちゃんと付き合ってたこと。そしてこの世界に来る前にフラれてしまったという話ぐらい、なんだけど。 みんなに…てか主にルーファスからメチャクチャ食い気味に詰め寄られ…仕方なく白状すれば。 ジーナは突然吹き出して、笑い転げてしまった。アシュレイやヴィンセントに至っては、口を押さえ笑いを堪えてるし。 ぐぬぬ…みんなしてからかいやがって~! 「……………」 ただ、ルーファスだけは違うようで。 話し終わった途端、ひとり複雑な表情を浮かべ黙り込んでしまったんだけど。 一体どうしちゃったんだろ? すんごく渋い顔して─────…って、まさか… (ルーファスは、女王様のこと…) ふと頭を過った考えを、いやいやと必死で否定する。 ああ、でも…あり得ない話じゃないよな。 女王様は美人だし、すっごく素敵な方だから、さ… 「ごめ、ルー…」 「セツ…?」 きっとオレ如き一般人が、別人とはいえ…恐れ多くもアリシア様と同じ顔の人と付き合ってました、なんて言っちゃったもんだから。 気を悪くしたんだなって。 その事実を前に。オレは複雑な感情を抱え、思わず泣きそうになったんだけど…。 「いきなり何を謝って…」 「だからっ…!るっ…ルーは、女王様のことが、」 “好き”なんだろって、堪らず不安を口に出したら。 『……………え?』 その場にいた全員が一瞬でピシリと凍りつき、固まってしまった。 暫し沈黙が続いて───── 「そ…それは残酷だねぇ、セツ。」 「はぁ…全く、鈍いにも程がありますね。」 どうしてだかアシュレイに苦笑され、彼はルーファスの肩をぽんっと慰めるよう叩き。 ヴィンセントに関しては、眼鏡を直すふりをして、実は笑いを堪えるのに必死になっていたという。 え、一体なんなの…? 「…オレ、なんか変なこと言った?」 オロオロしながら年少組に問えば、ふたりは困ったよう顔を見合せて。 「えと、なんていうか…」 「ホント自覚ねぇんだもんなぁ、セツは…」 と、曖昧な反応。 仕方なくルーファスを振り返ると…。 「私は…────断じて陛下に恋心などっ、抱いてはいない!」 …と、それはものすごい形相で以て、全力否定されちゃったもんだから。 えっと…てことは、あれかな? ルーファスは忠義に厚い騎士だろうから。自国の女王様を侮辱されたみたいに、捉えちゃったのかもしれないな。 そっかそっか…。

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