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④
「まあまあルーファス、考えてもみなよ?」
まだ少し不機嫌そうに見えるルーファスの肩を、更にポムポムとあやすアシュレイは。にっこりと笑みを湛えると、オレの方へと近づいてくる。
すると…
「セツがフラれたばかり、と言う事はだよ?即ち今は恋人がいないという事だろう?更には失恋したばかりで傷心し、寂しい身の上というわけだ…ならば────」
むしろ、好機じゃないのかい?…と。
悪戯にウインクしては、意味不明なことを言い始め。更には、
「だからね、セツ?もし人肌が恋しくなったらなら、いつでも僕のところにおいで?」
キミなら大歓迎だよと告げながら、
「んんッ……!」
あろうことか自身の唇に充てた指を、間接キスよろしく…オレのソレへぷにっと押しあててきたのであった。
そしてもれなくフリーズするオレ。
なんてヤツだ、こんなキザなことっ…。
アシュレイみたく美男子 じゃなかったら、絶対許されないヤツだぞ…コレ。
「アシュ殿…!!」
「あ~あ~また始まったよ…。」
「ルーも相当な苦労人だよねぇ。」
アシュレイがオレに恒例のセクハラをし、ルーファスが憤慨する…といった、お約束な遣り取りが始まり。年少組は呆れたよう顔を見合せると、苦笑を浮かべ始めて。
ヴィンセントはというと…それはそれは面倒臭いなとでも云わんばかりの、盛大なる溜め息を吐き出し、
「はいはい、無駄話はそのぐらいにして…とっとと行きますよ。」
引率の先生みたくパンパンと手を打ってその場をブッた切ると。みんな促して、ひとり先へと歩き始めてしまった。
全員ガヤガヤしながらも、仕方なくそれに続く。
「…ルー?」
謁見までの道すがら、じーっとオレの顔を凝視するルーファスに、なんだ?と疑問符を浮かべると。彼はハッと我に返り「なんでもない…」と、歯切れ悪く答える。
そのくせ、また横目でチラチラ見て来るもんだから…。気になるオレは、もう一度声を掛けようとしたんだけど─────
「る───」
『ルーファス様~!』
オレの声に被さって、より高らかな声音が同じ名を紡いで。
弾かれ振り返れば…そこには煌びやかなドレスに身を包んだ、ご令嬢様方の姿が目に止まる。
そうしてルーファスもオレに釣られて、そちらに視線を送ってしまえば…。
彼女らはウキウキとしながら、もれなく此方へと近付いて来るのであった。
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