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「ルーファス様、此度の舞踏会へは勿論いらっしゃいますわよね?」 「…ぶとう、かい?」 つい反応してしまったのは、オレの方であり。 後悔して、内心舌打ちするも… 「パーティーへは、なかなかご出席して下さらないでしょう?ですから今回、ルーファス様がいらっしゃるとの噂をお聞きして。皆楽しみにしてましたのよ!」 オレが話題に食い付いたのを良いことに。ご令嬢達は逃がさないとばかりに、ベラベラと喋り始める。 そうしてまた状況は、振り出しへと戻されてしまうのだが…。 「舞踏会?そのような招待は、受けておりませぬが…」 ブトウカイって聞いて、まず格闘する方を思い描いちゃったけど…。今話題に出てるのはきっと、ダンスパーティーのことだよね? どうやら、そういった賑やかな場が苦手らしいルーファスは。女性らの言葉に対し、少しだけ表情を曇らせたのだが…。 「まだ(おおやけ)にはされておりませんが…きっと陛下から直々のお達しが、あるはずですわ。」 「なんでも先日の定例議会により、神子様と守護騎士様を大々的にお披露目する場を…との、意見が出たそうで。」 神子が召喚されたという事実は、今のところ非公開としているものの…既に周知の沙汰。国の命運を担う神子なのだから、それも致し方無いのだろうけど…。 なんだか逃げ道のなさそうな雰囲気に、不安が募る。 「ルーファス様がいらっしゃるのなら、舞踏会がとても待ち遠しくなりますわね~!」 そんなオレの不安など知らぬお嬢様達は、皆でウキウキと頬を染め上げて。 「その時はぜひ一曲~」と手を振り、優雅に去って行っていかれたのだが。 嵐の後の静けさに、思わずルーファスと顔を見合わせる。 「とっ…とりあえず、女王様のとこに行こっか…」 「…ああ、そうだな。」 なんだか嫌な予感しかしないから、正直行きたくなかったんだけど。立場上、それは絶対に叶わないだろうから。 オレ達は重たい足を(もた)げ、みんなと共にアリシア様の元へと急いだ。

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