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「さあセツ殿は、どちらの衣装がお好みかしら?」 「あははは……参ったなコレは───…」 今日の謁見は、あくまで先日の事件報告がメインだと、ヴィンセントから脅っ…聞かされてたのに。 今回はいつもと一風異なり、客間の方へと通されたオレ達。 暫く待たされた(のち)、颯爽と現れた女王様が開口一番、嬉々として言い放った言葉は───── 『ダンスパーティーですわよ、セツ殿!』 告げて軽快な手鼓(てつづみ)の合図と共に、ゾロゾロと運ばれてきたのは… なんとも煌びやかな衣装の数々と、王族御用達の仕立て屋さんだった。 「ちょ、ちょっといいですか?アリシア様…」 「あらあら、なんでしょう?」 こちらが反応する間もなく始まった、パーティーとやらの衣装合わせ。 そういう社交場が苦手な年少組────…特にジーナは、あからさま嫌そうにしていたけど。 女王様の勢いに圧倒され、早々に根負けしたのか…気付けば従順に、年長組と揃って衣装の採寸をし始めていた。 その慣れからくる順応性ったら、さすがの一言。 まだ日が浅く免疫も足りないオレは、ひとり茫然とするものの…。 間髪入れずお声が掛かり、流されるまま女王様に手を引かれ。お高そうな衣装の群れを目前に、するのだが… 何故こうなったのか、城下での一件で何かお咎めでもあるんじゃなかったのか、などなど…ツッコミどころはそりゃもう満載なんだけど。 戸惑うオレを他所に、アリシア様から直々にハイッとテンション高めで衣装を渡されて。 思考が追い付かないオレは、ひたすら固まるしかなかった。 って…─────あれ? 「セツ殿、何かお気に召しませんでしたか?」 一向に状況を呑み込めず、棒立ちになるオレに。 きょとんと優雅に首を傾げる女王様。 いやいや、だってさ… 「えっと、気に入るっていうか…その、なんでオレだけ────」 渡された衣装が…なんだろう? 勿論、の。ルーファス達や美少女顔負けなロロでさえ、ちゃんとした男物なのに? 何かの間違いだと思いたかったが…手に渡された物は、どの角度からどう見たとしても、正真正銘…にしか見えなくて。 そんな至極当たり前な疑問もなんのその。 怪訝な表情を浮かべるオレに対し、女王様はさも当然の事といった様子で答えてみせるのであった。 「なんでもセツ殿は、先日女装をなさったそうで。それはもう愛らしく、お似合いだったとか!それを聞いて(わたくし)も是非是非、拝見したいと思ってましたのよ~!」 だからって、満面笑顔でドレスを手渡されても。 ハイそうですかと、喜んで受け取れるわけが無いのデスガ…。 そもそもだ、なんで常に宮殿にいるハズの女王様が。つい最近更新されたばかりの、オレの黒歴史を知ってるんだろう…? 不思議に思い真相を知るロロやジーナ、ルーファス達に無言で問い質してみたものの。みんな知らないって首を横に振ってるし。 …と、その疑問については女王様自らが、ズバリとお答え下さった。

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