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「神子の屋敷で働く侍女達は、元より(わたくし)の直属の者でして…。皆、私と趣向が似ておりますの!それに私は立場上、セツ殿のお屋敷へ理由も無く足を運ぶ事が、叶わないでしょう?」 そこで定期的に侍女達やヴィンセントからオレやルーファス達の話を聞いて…。日々の活力にしてるんだと、うっとり微笑む女王様。 力説するその姿は、いつぞやのアリサちゃんを彷彿とさせる。 「先日もその話をお聞きして、私ったら思わず興奮してしまいましてね…」 爺にこっぴどく叱られましたのよ~…なんて。 言いながら女王様の目は、眩しいほどに爛々と光り輝いていた。 しかし、あのメイドさん達が女王様とグルだったとは…。油断も隙もあったもんじゃないなぁ。 これからは屋敷の中でも気を付けなきゃ、次は何を暴露されるか分かったもんじゃないから───…と。 オレは肝に命じておこうと、自分に言い聞かせるのだった。 「神子の存在も徐々に明るみとなりつつありますし。聖騎士達の正式な任命式もまだだった故、重臣達からの要請もございましたので…」 「…………」 「…セツ様にとっては堅苦しい式典よりも、華やかなダンスパーティーの方が宜しいのではとも思い至り…。ならばセツ殿の愛らしい姿を、ぜひ皆にも披露して差し上げなければと…想像しただけで、なんだか胸がときめいてしまいますわ~!」 「は、はぁ…。」 「それにいっそのこと神子は、やはり乙女であったことにすれば…セツ殿も後々都合が良いのではないかと。後から思いつきましたのよ?」 妙案でしょう!と女王様。 国規模の話なんて、オレには想像もつかないが。 現実問題、色々と複雑なんじゃないだろうか。…と、最初こそは申し訳なさそうに話してたアリシア様、だったけど。 パーティーの話になると俄然人が変わり出し。それはもう熱く熱く語り始めたもんだから。 …いや妙案て、それって完璧後付けだよね?明らかにアリシア様が、女装させたいだけでしょ… こういうマイペースなところも、アリサちゃんにソックリだなぁ───…って、んなことよりもだ。 神子って命とか貞操…とか、一応狙われてる身なんだよね?果たしてそんなパーティーで大々的に御披露目なんぞして。派手に目立っちゃって、いいものなんだろうか…? 「神子だからと怯え、ずっと引き籠っていたら、つまらないでしょう?」 せっかくこの世界に来たのだから、楽しんだ方が良いのでは、と。率直な不安を口にすれば、アリシア様らしい回答が返ってきた。 うん、その考えはオレも賛成だけどさ…。 「…で、こちらの純白で素朴なドレスも、黒髪で清楚なセツ様に、スゴくお似合いではないかと思うのですが…」 「いやいやいやっ…」 だからといってコレは勘弁して欲しい…。 こないだのメイド服だって、今すぐ闇に葬り去りたいぐらい人生最大級の汚点なのに。 その上、今度は大観衆の前でオレみたいなのが女装なんぞして出ようもんなら──── …間違いなく“神子セツ”は、女装癖のある変態として扱われ。人々に、後世まで語り継がれたりするのであろう。 って…ヤダヤダ、そんなのマジで断固拒否! 女王様の手前なんて気にしてられず、オレが全力で首を横に振れば、アリシア様「左様ですか…」と、がっかりしたように見えた…けど。 「気が変わりましたら、いつでもおっしゃって下さいましね!」 衣装は神子の屋敷まで送っておきますから~と。本音諦めてないの駄々漏れだったが…その場は一応、了承してくれるのだった。 てかドレス以前に、パーティー自体が嫌なんだけどなぁ…。

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